2018年度における調査研究の結果、以下の(1)~(4)のことが明らかとなった。 (1)チセ(住居)跡の一部の可能性がある1640年~1663年の柱穴を新たに発見し、その周辺から磁器と漆膜が出土した。これによって、1640~1663年の23年間に限定される住居や村の様子についての新たなデータが得られた。(2)チセ跡の建築学的検討の結果、上部が桁受の又木柱を地中深く打ち込むために何らかの工夫が必要であったことや、緩い屋根勾配(低い屋根)の方が保温効果に適していることが確認された。(3)植物珪酸体分析の結果、一部のデータは17世紀中頃がそれ以前の時代よりも積雪量が少なかった可能性を示した。(4)豊浦町小幌洞穴遺跡から出土したラッコ骨についてAMS法による14C年代測定を行った結果、較正年代は紀元前8~4世紀を示し、一部は寒冷期と重なった。寒冷期(小氷期)の影響でラッコの生息域の南限が南下していた可能性を、あらためて小氷期の標本で検討する必要性へつながった。 以上の成果は、調査期間中においては洞爺湖有珠山ジオパークと連携してバス見学会を実施し、発掘現場に一般市民を招いて説明会を行った。年度末には、北海道博物館研究紀要で報告するとともに、伊達市において一般向け成果報告会を実施し、さらに、小学生向けの地質調査体験事業(地層からアイヌ時代の巨大津波を探る)も行い、一般市民に広く還元した。これらについてはNHK、北海道新聞社、朝日新聞社、読売新聞社、室蘭民報にて放送、掲載された。なお、4年間の研究成果の総括として遺跡発掘報告書も刊行した。
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