入会林野近代化法によって解体が促進されてきた入会林野について1970年の林業センサスおよび1990年の農林業センサスの集落カードのデータを入力し、データベースの構築を進めた。予算の制約上、47都道府県すべてのデータを入力することはできず、入会林野の存続を図る制度的な枠組みである生産森林組合の設立数に着目し、生産森林組合数の多い18府県を取り上げた。また、愛媛県、三重県、兵庫県についての現地調査を継続的に行い、愛媛県の事例については、2017年秋の日本地理学会(三重大学)で学会報告を行った。さらに、スコットランドでCommunity Landownershipに関する現地調査を行い、2018年春の日本地理学会(東京学芸大学)でポスター報告を行った。データベース構築については、データの確認作業などに力を注いできたが、データ分析に着手し始めた。1970年時点の共有林の有無がその後の集落レベルの人口動向と相関がみられることが一部の府県で確認されることが明らかになった。こうした分析についてはさらに対象範囲を広げ、精緻な分析を行っていく。県別の事例分析については、三重県の事例について土地利用との関係から考察を行っており、さらに愛媛県については、市町村合併の関連した部落有林野の統一の複雑な過程を整理し、関連して生産森林組合の設立がなされてきたことを明らかにし、そのことが結果として地域重層的で多様な構造を持った生産森林組合と公有林の構造を作り出してきたこと、林業生産活動の停滞と生産森林組合の運営を担ってきた地域社会の過疎化と高齢化による弱体化のため、これらの複雑な構造の維持できるだけの地域的条件が失われてきており、徐々に生産森林組合活動が弱まってきた。他方、スコットランドにおいては、コミュニティ単位での土地共有が促進されていることを明らかにした。こうした分析をさらに進め報告していきたい。
|