研究課題/領域番号 |
15H03288
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 達夫 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30114383)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 基礎法学 / 法哲学 / 立法学 / 正義 / 安全保障 / リベラリズム / 環境 / 貧困 |
研究実績の概要 |
初年度は、研究代表者:井上の指揮・統括のもとで、国内立法システムへのグローバル化の影響とグローバルな秩序形成の現実が孕む諸問題を世界正義論的観点から整理検討する基礎作業を、①人権保障のグローバル化、②世界経済正義、③地球環境問題、④安全保障問題の四つの問題群に分類し、分業で遂行した。 第一に、IVR世界大会にて井上を含む4名が、本研究課題の根幹的部分に関する試論的論文の報告を行った(2015.7.26-31)。また井上が責任編集した学術雑誌『法と哲学』の創刊記念研究会を、法理学研究会・京都生命倫理研究会と合同で開催した(2015.6.27)。さらに連携研究者の多くが論文を寄せた図書:瀧川・大屋・谷口編『逞しきリベラリストとその批判者たち』の合評会を東京法哲学研究会と合同で開催し、立法学と世界正義について原理的視座から綿密に議論した。(2015.12.19)。 第二に、①~④の各作業班に所属する連携研究者らが各々の専門分野における最新の知見を踏まえて、定例研究会にて自身の研究成果を報告した。具体的には、功績の非対称性と応報主義(2015.5.30)、関係論的平等主義、ピケティの世界経済正義の検討(2015.10.3)、フェミニズムによる同性婚批判、法概念論の諸立場の分析(2015.11.9)、カナダの多文化主義、子どもの権利(2016.3.4)が取り上げられ、これらのテーマついて井上が全体調整をしながら、立法学と世界正義論を統合するため様々な論点を整理検討した。 第三に、上の作業で得られた知見について現実の法制度への含意を探り、現在の実定法の改革案を提案するために議会民主政作業班会合を開いた(2015.5.15、7.1、9.14、12.2)。 第四に、上の研究成果のうち性と障害の問題について公開シンポジウムを行い、成果を社会に発信した(2015.9.27)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定されていた作業はほぼすべて終了した。ただし、地球環境問題に関する整理検討が本年度中に十分には完遂せず、来年度に積み残すこととなった。しかし、未達部分は来年度の9月の岡山・直島視察で達成する目途が立っている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、前年度の未達部分を完遂するとともに、基本課題①「国内立法と国際法形成の分業原理の再編」を中心として、次の三つの梯子を踏んで研究を進める。 Step 1:本年度の第1四半期(2016年4月-6月)において、初年度の基礎作業を分担した各作業班が、それぞれの作業課題についての研究をまとめた報告を全体研究会で行って討議し、研究代表者井上と連携研究者全員が各作業班の研究成果について理解共有をはかる。また、井上はケンブリッジ大学に出張して同大学滞在中の郭との研究連絡を補完する。各作業班の研究進捗状況につき全体討議で指摘された問題点については、この期間内に各作業班が補正作業を完了する。 Step 2:第2・3四半期(2016年7月-12月)において、Step 1で得られた4つの基礎作業課題の理解共有を踏まえて、「国内立法と国際的法形成の分業原理の再編」について、定例全研究会や研究合宿等における共同研究者全員の集中的討議により検討する。人権保障のグローバル化、世界経済正義、地球環境問題、安全保障の集団化という4つの問題群の検討から抽出できる基本課題①についての諸含意は何かを検討し、これらを統合的に理論化するための作業仮説を複数提示して、それらを比較査定し、的確な分業原理の構築を試みる。このために、研究代表者・連携研究者が集結して岡山にて合宿を行うとともに、直島の環境問題の取組みを調査・研究する。 Step 3:第4四半期(2017年1月-3月)において、Step 2の理論構築作業につき問題点が残る場合はこの期間に補正を試みるとともに、次年度において遂行する基本課題②「国内立法と国際法形成の民主的答責性保障」のための予備的討議も定例研究会で始める。
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