研究課題/領域番号 |
15H03298
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
赤池 一将 龍谷大学, 法学部, 教授 (30212393)
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研究分担者 |
土井 政和 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30188841)
日下 修一 聖徳大学, 看護学部, 教授 (00566614)
寺中 誠 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60648723)
三島 聡 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60281268)
松田 亮三 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20260812)
金 尚均 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (00274150)
岡田 悦典 南山大学, 法学部, 教授 (60301074)
魁生 由美子 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (70331858)
本庄 武 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60345444)
笹倉 香奈 甲南大学, 法学部, 准教授 (00516982)
森久 智江 立命館大学, 法学部, 准教授 (40507969)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 矯正医療 / 医官 / 刑事収容施設法 / 医療法 / 矯正医官特例法 / 民間委託 / 厚労相移管 / 健康保険適用 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、28年度以降の本格調査のための準備として、一方で、矯正施設における医官確保の前提条件となる「矯正施設において医療がどのように構成されているか」(「矯正施設と医療」)の検討に用いる質問項目を作成し、他方で同様の観点から「社会全体の医療において矯正医療はどのような位置付けにあるか」(「一般医療と矯正医療」)について、矯正医療の「厚生省への移管」とそこでの「社会保険の適用」の進行度の観点から、矯正医療の社会的構成がどのように組織されているかに関する基礎的な比較制度検討を行うために、国内での研究会3回、国内調査3件、および海外調査3件(各2名程度)計画した。 第1の質問表については、まず、仮案を作成し、国内調査4件(長野刑務所、富山刑務所、高松刑務所、松山刑務所)、国外調査2件(ドイツ/ギーセン刑事施設、フランス/ムラン刑事施設)において、順次、医官(医師)、施設職員、施設長等に対して半構造化インタビューを開始し、質問項目の修正等を行った。 第2の矯正医療の社会的構成に関する調査については、研究会(京都/長野/松山の計3回実施)において最近日本で施行されたいわゆる「矯正医官特例法」の立法経緯とその内容およびその効果についての検討を、また、長野刑務所での調査を起点に、日本での医官業務の民間委託に関する理論的検討の方向性のほか、国連の被拘禁者処遇最低基準の改訂版における施設医療に関する規定等の調査から、国際的な基準とその方向性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」とした理由は、一つには、海外調査、国内調査の遅れが目立つ点にある。種々の理由があるとはいえ、3件(6名)を予定した海外調査は2件(3名)にとどまっている。海外調査においては、昨年の欧州でのテロ事件の影響もあり出足が遅れ、厚労省移管の進行度による各国のグループ分けにしたがった調査ができていない。3件を予定した国内調査は回数的には予定を上回り、医官の確保が順調な施設についての調査については一定の成果を得たが、医官の確保が困難で民間委託を実施している5施設については1施設を調査しただけで調査結果を理論化する上で遅れが認められる。 さらに、問題は、「社会全体の医療において矯正医療がどのように構成されているか」の調査において、日本での「矯正医官特例法」や国連の「マンデラ・ルール」での国際基準についての検討は一定程度行われたものの、本来予定していた「厚労相への移管」と「社会保険の適用」に関する比較制度研究が進んでいない点にある。 後者の遅れは、本研究に先行研究が皆無であり、それゆえ、学祭的な性格を強く持つものであることからして当然に想定されていた事態であるが、矯正医官の安定的確保を行うための方策を実施してきた国々について、その経緯を調査する一方で、そうした国々の社会福祉をめぐる基礎的事情についての理解は不可欠であり、この部分は本研究にとってはきわめて重要である。この部分では文献研究の遅れが目立ち、それが研究全般の遅れの原因となっていると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
国内調査、海外調査については、そそれぞれの計画を年度の早期に確定し、予定した調査を実施するとともにその質的向上に努める。特に、英国、ノルウェー、合衆国、オーストラリアについての事情の整理が可能となるように、これらの国での調査を進める。その上で、限られた調査対象と時間のなかで多様なインタヴュー対象を確保することにはそもそも無理があるので、一定の面識を持つ相手には国内・海外を問わずメール等の手段を用いての調査の充実を図る。なお、特に、国内調査については、医官、准看護師を含む矯正職員、そして所長からの聞き取りが中心となっているが、今後は、施設内の看護師やいわゆるパラ・メディカル等に対象を意識的に拡大する。 社会における一般医療のなかで矯正医療の位置付けについて、特に、フランス等の国々で、矯正医療の厚労相への移管、社会保険の適用が行われ得た基礎的事情を明らかにして、平成28年度中に本研究における日本でのこれらの政策の導入可能性に関する分析の基礎となる一定の基準を確立する必要がある。学祭的であり、かつ先行研究の存在しない領域ではあるが、医療経済学、社会福祉学専攻者の協力を得て実施する。 また、矯正医療の日本の現状を、行刑改革会議から矯正医官特例法等の立法にいたる議論を踏まえて紹介し、海外の研究者からの実践的提言を得るために合同の研究会等を開催する必要が認められるが、そのための準備を平成28年度中に行う。
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