研究課題/領域番号 |
15H03299
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 敬三 京都大学, 法学研究科, 教授 (80191401)
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研究分担者 |
中山 茂樹 京都産業大学, 法学部, 助教授 (00320250)
コツィオール ガブリエーレ 京都大学, 法学研究科, 准教授 (10725302)
栗田 昌裕 龍谷大学, 法学部, 准教授 (30609863)
幡野 弘樹 立教大学, 法学部, 教授 (40397732)
木村 敦子 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50437183)
窪田 充見 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60186450)
長野 史寛 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60551463)
土井 真一 京都大学, 法学研究科, 教授 (70243003)
吉永 一行 京都産業大学, 法学部, 講師 (70367944)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人格権 / 身体的人格権 / 家族的人格権 / 社会的人格権 / 人格の商品化 |
研究実績の概要 |
(1)平成28度は、理論研究班では、①権利観に関する従来の議論のトレースと問題点の洗い出し、及び、②人格権の範囲を画する考え方に関する従来の議論のトレースと問題点の洗い出しを行った。さらに、これら検討内容や各班の調査・検討成果をふまえて、人格権の理論的枠組みの構築に関する検討に着手した。 (2)各論研究班Aでは、身体・精神・家族と人格及びそれらと財産権との交錯に関する主要な問題について、内外の立法・判例・学説に関する調査・検討を行った。具体的には、私生活の平穏に関する諸問題や家族的人格権に関わる家族形成をめぐる諸問題(夫婦別姓や再婚禁止期間に関する判例等)を取り上げ、意見交換をした。 (3)各論研究班Bでは、社会・環境と人格及びそれらと財産権との交錯に関する主要な問題について、内外の立法・判例・学説に関する調査を行った。具体的には、名誉・プライバシーに関する問題のほか、自己イメージの表出や自己情報の射程に関する諸問題や環境人格権に関する諸問題を取り上げた。 (4)比較法研究班では、フランス、ドイツ、オーストリアの人格権に関する法制度や欧州人権裁判所の裁判例等をめぐる動向のほか、ヨーロッパ不法行為法の調和に向けた取組みにも目を向け、人格権保護の位置付けについて調査・検討を行った。さらに、平成28年度に実施する予定であった外国人研究者の招へい研究会が諸般の事情で同年度中に実施することができなかったため、研究計画の一部を繰越した。これにともない、平成29年4月に、Peter A. Windel 教授(ボッフム大学)による講演「法的人格と人格権」(4月5日、於京都大学)、「ドイツ民法による給付遅滞における法的救済」(4月7日、於駿河大学)を開催し、ドイツ法を中心とした人格権に関する議論について知見を獲得するとともに、活発な意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、各論研究班・比較法研究班では、予定していた具体的研究課題に取り組み、十分な成果を上げることができた。 ①各論研究班Aでは、身体的人格権と家族的人格権及びそれらと財産権との交錯に関する問題を取り上げ、人格権の特質と保護・支援制度の在り方について検討を行うことができた。例えば、氏や婚姻の自由をめぐる裁判例や学説に関する検討を行い、家族形成に関する家族的人格権の基礎づけと内実を明らかにした。②各論研究班Bでは、名誉・プライバシーに関する問題のほか、自己イメージやパブリシティに関する問題を中心に取り上げ、社会・環境と人格及びそれらと財産権との交錯に関する主要な問題について、それぞれの人格権の特質と保護・支援制度の在り方について検討することができた。③比較法研究班では、フランス、ドイツ、オーストリア民法の調査のほか、人格権に関する欧州人権条約や欧州人権裁判所の裁判例等をめぐる動向を調査・検討し、他の班における検討のために必要な比較法的資料を提供することができている。 また、理論研究班では、権利観や人格権の範囲に関する従来の議論のトレースと問題点の洗出しを行うとともに、上記各研究班の分析内容をふまえての検討を行い、次年度以降の展開研究期に従事するための研究基礎を構築することができた。具体的には、公共性、市場性、人間の尊厳との関わり合いという観点から個別人格権の基礎づけと内実について検討し、人格権の一般的要素と位置付けられるものと、個別人格権の特質を基礎づける要素を抽出し、整理することができた。これらの知見を前提として、人格権の一般的な性質の再検討やその範囲の確定に関わる理論的枠組みの構築に踏み出すことができている。また、各人格権の特質と保護・支援制度のあり方との関連性について検討し、各問題状況に対応した具体的な保護・支援制度のあり方の構築に向けての方向性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの基礎研究を踏まえた展開研究期として、特に次のような作業を行う。 (1)理論研究班では、基礎研究期の成果を踏まえて、人格権に関する理論枠組みを構築する。その際、他の研究班とともに共同検討会を3~4回程度開催し、意見交換を行いながら、各班の調査・検討の成果を踏まえて、理論枠組みを構築し、それを各班にフィード・バックする。 (2)各論研究班Aは、理論研究会において検討された理論枠組みを踏まえて、身体・精神・家族と人格、及びそれらと財産権との交錯に関する問題について、比較法研究班と協力しながら国内外の立法・判例・学説に関する調査を継続し、それぞれの人格権の特質に応じた保護・支援モデルを検討する。(3)各論研究班Bは、理論研究会において検討された理論枠組みを踏まえて、社会・環境と人格、及びそれらと財産権との交錯に関する問題について、比較法研究班と協力しながら国内外の立法・判例・学説に関する調査を継続し、それぞれの人格権の特質に応じた保護・支援モデルを検討する。 (4)比較法研究班では、これまでの比較法研究を継続・発展させ、各班と協力しながら、それぞれの検討をサポートする。 (5)展開研究期1年目から、新たに全体会として立法班を設置し、各班の調査・研究の成果をもとに人格権に関する立法提案の作成に着手する。具体的には、各班における検討の際に立法提案の素案を作成し、3~4回程度全体会を開催して、意見交換を行う。
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