研究課題/領域番号 |
15H03307
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横田 正顕 東北大学, 法学研究科, 教授 (30328992)
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研究分担者 |
森井 裕一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00284935)
加藤 雅俊 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (10543514)
上川 龍之進 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (40346656)
八十田 博人 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70444502)
杉之原 真子 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (80376631)
高安 健将 成蹊大学, 法学部, 教授 (90399783)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 緊縮政策 / 財政規律 / 比較政治経済学 / 日本 / アメリカ / ヨーロッパ / オーストラリア |
研究実績の概要 |
平成29年度において、分担者から申告のあった論文は6点、著書は7点、学会報告は6件であり、直接的な業績とはならない翻訳書の刊行などや非公式の研究会報告なども含めれば、科研共同研究としては標準的もしくはそれ以上の業績内容であったということができる。 分担者の旺盛な研究活動を踏まえて、年度末には、1年間の研究成果を踏まえた合同研究会が行われ、次のような知見が得られた。 本研究の対象とする先進諸国では、1980年代以降、一般に財政再建の圧力にさらされるようになったが、財政規律化のメカニズムの導入とその制度化のレベルにおいては様々であった。この点で最も徹底していたのがドイツの事例である。ドイツでは、財政規律のメカニズムが脱政治化され、すでにルーティン化されていたが、このことによって欧州危機の発生に伴ってこれをEUレベルにアップロードすることにも成功した。オーストラリアもまたドイツと異なる形で財政規律化のメカニズムを予算プロセスの中に内装することに成功している。ただし、予算検証プロセスの脱政治化の度合いは、ドイツに比べてやや低いように思われる。 南欧諸国はEU財政条約の下でそれぞれに財政再建メカニズムの国内化を余儀なくされたものの、その運用実態に一貫性がなく、財政再建を始めとする欧州危機後の構造調整が過度に政治化してしまったために、程度の差はあれ政党システムの流動化や民主的ガヴァナンスそのものの混乱に至った。おそらく唯一の例外はポルトガルであるが、その原因については更なる探求を要する。 日米については、財政規律化のメカニズムの制度化が最も弱く、かつ実質的な取り組みが見られるわけでもない。日本については、緊縮はむしろ政治的言説に深く関わる現象であること、またアメリカについては、古典的な視点ではあるが、政治的景気循環と財政規律の弛緩との関係が再確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と同様であるが、本科研共同研究に参画する研究者の所属機関の所在地や居所が遠距離にまたがっていることや、学内外で要職に就いている分担者が多いことなどから、一堂に会して共同作業を行うことは困難であった。また、当初計画においては国際シンポジウムなどの企画も入れ込んでいく予定となっていたが、これについては日程調整の難しさに加えて、給付金額を超える負担分を外部から調達しなければならないこともあり、見送りを決断しなければならなかった。この点については、率直に計画の後退を認めざるを得ない。 にもかかわらず、各分担者における研究成果の公表については極めて旺盛であったというべきである。また、分担者の1人である加藤が取りまとめたプランが、日本政治学会研究大会の分科会の企画案として採用されたことは、本科研最終年度に当たる平成30年度の活動に向けての下準備として大いに意味があることであった。 以上のことから、平成29年度の活動を総括してみた場合に、おおむね順調と判断するのが妥当であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は研究期間の最終年度にあたるため、これまでの研究成果を踏まえてこれを深化・精緻化した研究の総括を行うことが最大の課題となる。 [1]関連資料・情報の収集…資料収集に関する最後の不足分を補いながら、高安が英国における資料調査・文献収集・インタビュー等を実施する。これにより本研究の課題に沿う調査のサイクルが終了する。横田もまた同様にポルトガルまたはスペインでの現地調査を実施する。 [2]研究会の実施と研究の総括…過去3 年間の作業結果を素材として横田が総括的な見通しを与えるペーパーを作成し、これに基づくメンバー討論を通して暫定的結論を提出する。ペーパー作成段階では東京を開催地とする研究会を催し、そこで議論された内容を集約しながら、これまでの研究の反省点と今後の発展可能性について討議する。本科研を継続課題とするか、規模拡充してより広い枠組みで比較政治経済学研究を深めていくか、などについても検討を加える。 [3]2018年10月に予定される日本政治学会研究大会にて、本科研のメンバーである代表者・横田と、分担者・加藤が中心となって、科研共同研究の枠組みを超えて緊縮政治の影響について考察する分科会が組織されることが決定している。 [4]以上の内容を踏まえて、共同研究メンバー全員を含む形での論集の出版作業に取り掛かる。2018年夏をめどに、構成案の作成に取り組み、具体的な出版契約に持ち込んでいく予定である。
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