新興国の政治経済的発展が、先行する欧米諸国と異なることは通説となって久しい。他方、なぜ異なるのかという根本的な問いに答えることは絶えず変化する現実を前に困難であり、特に学際的アプローチを必要とする研究は十分に進んでいると言えない。本研究ではその一つである民主化と租税制度の関係に焦点をあてる。本研究では、先進国で形成された近代的制度の恩恵を受ける新興国の民主化において、租税が欧米とは異なりながらも同等に重要な役割を果たすことをマクロ・ミクロレベルの分析で示すことを目的とした。新興国の民主化における租税の役割を解明することで、比較政治学の民主化研究にも貢献する。 本年度においては、当初の目的を達成し、昨年度に行ったシンポジウムでの発表論文を含む、三論文を、政治学の国際専門誌に発表することできた。これらは当初の目的を達成するのに、重要な実績であった。それに加えて、米国、ヨーロッパの研究者から、招聘を受けたことで、これら研究を新たに発展させる機会を得ることができた。具体的には、ヨーロッパ連合大学の研究者グループから、近代的課税一般に関わる共同研究に招かれることで、現在まで対象としてきた、新興国の付加価値税、所得税などの税制に加え、先進国を巻き込んだ形での、比較租税研究を行う展望がひらけた。今後は、新興国の研究で得た知見を、以前に蓄積した先進国に関わる知見と照合させ、さらなる比較租税研究の発展をはかりたい。
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