本研究は、中央政府の地方政府に対する関与のあり方について人事行政(地方公務員給与決定)の観点からその範囲と程度について明らかにするとともに、地方政府が中央政府の関与を受容している場合、その政治的・行政的要因(何故受容するのか)を明らかにすることを目的とするものである。 地方公務員(約275万人)の給与体系・水準決定に関する法制度と実態の間には大きなかい離があるが、学術的に検討されることは殆どなかった。諸外国を見ても、地方公務員の給与決定に関する研究は皆無に近い。本研究は、このような学問上の空隙を埋め、中央政府が地方政府の職員給与決定にどのようにかかわっているのかを明らかにするとともに、その背景にある政治的・行政的要因を検証しようとしている。 本年度は、最終年度にあたり、引き続き日本国内における自治体へのヒアリング調査を進めるとともに、定期的に研究会をもって過年度のアンケート調査結果の分析を進めた。 また、代表者は、地方公務員制度の大転換にあたる、臨時・非常勤職員制度の変更を目前として、会計年度任用職員制度へと非正規雇用地方公務員を転換するに際して、給与決定がどのようになされるのか、また、それに対して、国(総務省公務員部)はどのような指導を行うのか、について、調査研究を進めた。新制度への移行に際して、条例の整備等が必要だが、総務省の当初示したスケジュールである2018年中の条例制定がなされた自治体は、東京都などごくわずかで、2019年3月末をもってしてもまだ大部分の自治体では条例が制定されていないことが判明した。ヒアリングでは従来の指導の限界を指摘する声も聴かれたところである。
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