研究課題/領域番号 |
15H03317
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
飯田 健 同志社大学, 法学部, 准教授 (50468873)
|
研究分担者 |
西澤 由隆 同志社大学, 法学部, 教授 (40218152)
松林 哲也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (40721949)
三村 憲弘 武蔵野大学, 法学部, 准教授 (40453980)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 投票外参加 / インターネット調査 / 確率標本 / 地図抽出 / リスク態度 / 政治参加 |
研究実績の概要 |
平成29年度の成果として次の4点に集約される。第一に、日本において確率標本を用いたインターネット調査の本調査を実施した。これまでの2回のパイロット調査の結果とその分析をふまえ、今回は回収率を高めるために未回答者をフォローして調査依頼を行ったこと、標本規模を大きくすることを目的に抽出数を増やすこと、地図抽出において集合住宅が適正な数含まれるよう工夫したこと、を試みた上で、2018年2月3日(土)から3月4日(日)までの期間、近畿三府県(京都、大阪、兵庫)から無作為地図抽出によって選ばれた18歳から69歳までの男女(50人×32地点=1600人)を対象に調査を実施した。また、依頼を行った際の状況(訪問回数、手渡しか、不在による投函かなど)や、住居形態など調査員による調査環境データも収集した。 第二に、上記の調査と同じ調査システムを用いて、それに並行する形で2018年2月27日(火)から3月4日(日)の間、楽天リサーチパネルからの地域、性別、年代による割り当て標本(全国18歳から79歳の男女2008人)に対して通常のインターネット調査を実施した。 第三に、全米のデモグラフィックに合わせてQualtricsの登録パネルから、年齢、性別、地域によって選ばれた18歳以上の男女からなる割り当て標本(n=631)に対して、2017年8月16日から8月18日の間、インターネット上で調査を実施した。 第四に、日本で実施した地図抽出による確率標本に対するインターネット調査と通常のインターネット調査において、本研究プロジェクトにおける主要な理論的関心である、リスク態度が投票参加および投票外参加に与える影響について検証するための無作為化サーベイ実験を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究業績の概要で述べた4つの点に触れつつ、以下、それぞれ到達度について述べる。第一に、研究計画どおり、日本において確率標本を用いたインターネット調査の本調査を実施したことについて、これまでのパイロット調査や新聞社による同種の試みの知見をふまえて工夫したにもかかわらず回収率は十分高い水準に達しなかった。しかしながら、回収率が高くならなかった原因を分析し、無作為地図抽出による確率標本を用いた新しいインターネット調査を実用化するためのデータは取得できた。 第二に、日本において通常のインターネット調査を上記調査と同時期に同じ形式で実施したことについて、これにより研究計画どおり、調査モードの違いによるデータの質の比較が可能となった。 第三に、アメリカにおいて通常のインターネット調査を実施したことについて、研究計画どおり日本のデータと比較するために、選挙の無い時期におけるアメリカ人の投票外参加に関するデータが取得できた。 第四に、日本における無作為地図抽出による確率標本を用いたインターネット調査と通常のインターネット調査において、リスク態度と投票参加および投票外参加の関係に関する実験を行いデータを取得したことにより、調査方法論だけでなく実質的な政治学研究における知見を提供するための準備が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの到達度で述べた4つの点に触れつつ以下、今後の研究推進方策について述べる。第一に、日本において無作為地図抽出による確率標本を用いたインターネット調査を実施したことについて、前述のとおり回収率が依然として十分高くなかったこと、およびその原因を検討するための十分なデータが得られたことをふまえ、RDDなど無作為地図抽出以外の方法で確率標本を取得しインターネット調査を実施することについて検討する。検討の結果、その方が成果が見込まれると判断された場合はそれを実施するし、データ分析の結果、従来の無作為地図抽出による調査に改善の余地があると見込まれた場合には引き続き無作為地図抽出による調査を実施する。 第二に、日本で通常インターネット調査を実施したことについて、このデータと無作為地図抽出によるインターネット調査のデータを比較することで、両調査モードの間にどのような違いがあるか、母集団のパラメータ(例えばパスポート取得率等)に対する誤差にどの程度違いがあるか検討する。 第三に、アメリカでの非選挙時の通常インターネット調査を実施したことについて、このデータと、日本での無作為地図抽出によるインターネット調査と通常インターネット調査のデータを比較することで、日米の投票外参加の決定要因を比較する。 第四に、日本における無作為地図抽出による確率標本を用いたインターネット調査と通常のインターネット調査において、リスク態度と投票参加および投票外参加の関係に関する実験を行い取得したデータを分析することで、リスク態度がどのような形でデモなどの投票外参加と結びつくのか、投票参加の場合とどのように異なるのか、検証しその結果を論文にまとめる。
|