研究課題/領域番号 |
15H03323
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
阪口 功 学習院大学, 法学部, 教授 (60406874)
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研究分担者 |
毛利 勝彦 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (00247420)
亀山 康子 国立研究開発法人国立環境研究所, 社会環境システム研究センター, 室長 (10250101)
宮崎 麻美 熊本学園大学, 経済学部, 講師 (60579332)
太田 宏 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (70288504)
眞田 康弘 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, 客員次席研究員 (70572684)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境外交 / ミドルパワー外交 / 国内実施 / 有効性 |
研究実績の概要 |
本年度の研究目的は、イベント・ヒストリーの作成、国際システム要因(日本の国力の相対的地位、戦略環境)の変化と日本の環境外交の対応の把握、日本の国内政治過程の変化の把握等である。イベントヒストリーについては近年のイベントを除きほぼ作成が済んでいる。国際システム要因については、日本の環境外交が活発化した1990年代はシステム要因との一致が見られたが、国力の相対的低下と安全保障環境の悪化が進む21世紀に入り、予想に反して環境外交が沈滞していたことが確認された。また、日本の政治過程についても、官僚から官邸へと政策決定過程の重点がシフトしていることが確認された。 また、米国公文書館、国連公文書館、英国公文書館、国立公文書館(日本)にて、外交資料の収集を行うとともに、国連持続可能な開発サミット、気候変動枠組み条約パリ会議、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク、POPs条約、水俣条約、ワシントン条約の締約国会議または年次会合に参加し、参与観察を行い、日本政府の交渉参加姿勢を参与観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際システム要因では、日本の国力の相対的地位の変化を把握する必要があるが、国力の総合指数として一般に利用されるCINC indexのデータの更新(2007年まで)が遅れているため、暫定的にGDPデータ(軍事力は評価外)を利用して日本の相対的地位の低下を把握した。CINCのデータが更新され次第改めて国力分析を行う予定である。 理論的には、環境外交の駆動メカニズムとして、経済・社会・環境側面を並列的・複合的・同心円的に概念化するモデルが存在し、それによって駆動要因としての国内経済要因の位置付けが変わることが確認された。また、1月27日に元外務省地球環境大使と農林水産省の交渉担当官を講師として招聘し実施したが、報告を通じて、日本の行政府・立法府の条約批准能力の制約が批准が遅れる原因となっている可能性が示唆され、環境外交を分析する上での行政学的視点の重要性が照らし出された。また、インタビュー調査により外務省が批准前に十分な国内法の整備を求めることが批准が遅れる原因となっている可能性も把握できた。 事例については、気候変動の分析は順調に進んでいるが、オゾン層保護に関する分析は日本に関する文献が少なく、初年度は分析が十分に進まなかった。水俣条約については、インタビュー調査、資料分析を通して、国内調整と国際交渉との連関が明らかになりつつある。ラムサール条約については、締約国会議の参与観察を通じて、日本のNGOの参加が活発であり、国内実施の継続的強化の要因となっている可能性が示唆された。他方で森林についてはUNFFの議事録が各政府の姿勢を把握できない形で作成されているため、日本の外交姿勢の確認にはインタビューなど別のアプローチが必要となることが明らかになった。 なお、研究の成果は、前年度に環境経済政策学会、日本国際政治学会、環境法政策学会などで報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、前年度の研究で重要性が明らかになった行政学的観点を含む国内政治過程の分析を進めるとともに、各事例における国内経済要因の分析をほぼ終える。 また、国内社会要因の分析にも取りかかる。まず、全体的な世論の動向を把握するため、内閣府の環境・地球環境に関する世論調査データ、新聞記事の記事検索(地球環境、環境、ラムサール条約、生物多様性などのキーワードで検索)を利用して、時系列データを作成する。さらに、科学者、環境NGO、開発NGO、地方自治体によるボトムアップの啓発活動、キャンペーン活動、政府への助言・働きかけなどを調査する。 また、環境外交の効果を分析するための参与観察を本格化させ、条約へ関与の形態を把握する。国内実施については、環境法の国内実施の研究者をゲストスピーカーとしてワークショップを開催し、得られた知見を日本の国内実施の分析に活用する。さらに、各事例毎に条約事務局が保有する日本の国別報告書、OECD の対日環境パフォーマンス報告書、国内実施法制などを調査し、事例毎に日本の国内実施の水準とその変遷を把握する。 参与観察については、ワシントン条約締約国会議、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク政府間会合、生物多様性条約締約国会議など予算が許す限り積極的に取り組む。インタビュー調査も、本格的に実施していく。 研究の成果は、次年度でも各学会で積極的に報告していく予定であるが、既に宮崎麻美、太田宏、阪口功の国際学会での報告が確定している。毛利勝彦もInternational Studies Associationに報告応募する予定である。これに加え、国内の学会でも積極的に報告していく。
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