研究課題/領域番号 |
15H03335
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西山 慶彦 京都大学, 経済研究所, 教授 (30283378)
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研究分担者 |
人見 光太郎 京都工芸繊維大学, その他部局等, 教授 (00283680)
文 世一 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40192736)
小西 葉子 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (70432060)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 計量経済分析 / 構造計量モデル / 特定化検定 / 小売業 / 生産性 / 国際交通インフラ |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、Konishi and Nishiyamaは、供給関数が非弾力的な財を扱う小売業者の効率性を測る手法を提案した。小売業を含めたサービス産業は生産性計測が難しい。利潤や売上げに基づく測り方では、需要の影響を直接受け、サービス提供者自身の効率の測定には不向きである。この研究では、農業生産物を扱う小売業者の行動を、生産者、需要者の行動と合わせてモデル化し、小売業が完全競争であるという想定の下でその費用効率性を測定する構造計量手法を提案した。実証分析では都道府県別の農産物卸売価格、小売価格に加えて、関係する商業地代やガソリン価格等の要素価格、気象のデータを用いて年別、都道府県別の費用効率性の測定を行った。全国に集計してその推移を調べたところ、ほぼフラットで、効率性はあまり変化していないことが見て取れた。 生産関数の特定化検定に関わる研究として、Hitomi, Iwasawa and Nishiyama(2016)の"Optimal minimax rates of specification tests for IV regression"では、操作変数回帰モデルの特定化検定における最適な一様レートの導出を行った。通常の回帰モデルにおけるレートはGuerre and Lavargne (2000;G&L)において導出されているが、その一般化を行っている。 Munの研究では、隣接する二国の国境を跨ぐ交通インフラストラクチャの共同整備のあり方について理論的に分析した。各国が投資水準を分権的に選択し、インフラストラクチャの運営者が収支均衡するよう使用料を設定する場合、効率的な資源配分を達成することが示された。 なお、3月1日に京都大学において関連分野に関する研究集会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の予定通り進捗している。本研究のテーマは、生産関数の特定化検定、内生変数がある場合にDEA分析を主たる目的とするが、前者については、Iwasawa, Hitomi and Nishiyamaの論文がほぼ完成に近付いている。DEA分析の方については、キャパシティ制約が顕著な小売業の生産性分析をターゲットと考えていたが、そのアプローチよりも費用効率性を測るアプローチの方が直接的で既存研究との親和性も高いとかんがえられるので、そちらの方針で研究を進めている。しかし、DEAでなければ計測できないような業種も考えられるため、今後の課題として研究を進めていく予定である。トラック輸送の分析については、現在論文の改訂作業が進行中で、平成28年度中に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Iwasawa, Hitomi and Nishiyamaの論文がほぼできあがっているが、理論的に不十分な点があるため、それを平成28年度中に整理して投稿することを予定している。DEA分析の研究について、今年度は費用効率性の計測問題の方向に転換して研究を進めたが、DEAでなければ計測できないような業種も考えられるため、今後の重要課題として研究を進めていく予定である。トラック輸送の分析については、実証部分の追加作業を行っており、平成28年度中に投稿予定である。 小売業の生産性計測に関しては、前年度に供給関数が非弾力的な財を扱う小売業者の効率性を測るという課題について研究を進めてきた。他方、より一般的な弾力的供給関数をもつ財の小売業の分析については、とりかかっただけであり、これについて研究を進める。その場合は、小売業者の競争度についてより詳細な枠組みが必要となり、財ごとに異なる可能性が高く、多様な財を取り扱う小売業者のモデルを作るには、理論的により複雑な構造を考える必要がある。
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