研究課題/領域番号 |
15H03336
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福重 元嗣 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10208936)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 指数論 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、これまでの研究の中で提案されて来た効用関数の中から、家族属性を考慮した効用関数に注目し、所得階層別の世帯構成の違いを考慮した物価指数の作成方法についてサーベイ及び拡張可能性についての検討を行った。この過程において、これまでの多費目の需要関数は、Stone=Geary (Bernoulli=Laplace型) の効用関数に基づく線形支出関数を除けば、これまでに提案された多費目の需要関数は、明示的に効用関数を仮定して需要関数を導出したものはほとんどなく、効用関数レベルに戻って家族属性の変化を考慮した多費目の需要関数を導出するためにはStone=Geary型の効用関数を拡張するものに限定されることを確認した。 現時点では、少なくとも実際のデータによる最もあてはまりの良い多費目の需要関数で、家族属性を考慮した特定化を探索し、特に世帯主年齢とコーホートの効果を考慮した効用関数の特定化から導出される多費目の需要関数が、実際のデータに対して当てはまりが良いことを確認している。この過程において、Stone=Geary型の効用関数の効用関数よりもさらに一般的なフレキシブル型の効用関数、たとえばトランス・ログ型効用関数にこの拡張が適応可能か、さらにはPIGLOG型の支出関数やAI需要体系といった近年の多費目の需要関数に、家族属性や所得水準の違いを導入することした場合についても実際のデータの当てはまりの良さについて検討したが、Stone=Geary型の効用関数を拡張するものが、最も当てはまりが良いことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、多費目の需要関数を導出することにより家族属性の変化に対応した物価指数の計測方法を提案しようとする本研究の目的に照らして、研究の第1段階として、家族の属性を考慮した多費目の需要関数について、実際のデータに基づいて、当面の結果ではあるが、最も当てはまりの良い需要関数について確認したことは、本年度の計画が順調に進んでおり、研究計画にあった次年度の研究に進むことが可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方向は、第1段階の研究がほぼ終了したことにより、第2段階、第3段階、第4段階へと順次研究を進めてゆく予定である。 第2段階では、家族属性が変化しない場合における多費目の需要関数に基づいた所得階層別の消費者物価の計測方法の開発である。第1段階で発見した最も当てはまりの良い多費目の需要関数を基に、家族構成に変化がない場合に、価格変化の前後の各消費支出項目に関する支出額の変化を実質化された総支出額の関数としてとらえ、価格変化の前後で同一の効用水準を与える総支出額を求めることは、単純な計算では不可能であることが予想されており、平成29年度中には、計算方法の確立と、実際の家計調査による所得階層別消費者物価指数の近似的な計算方法を開発し、この問題を解決する予定である。この計測方法は、ラスパイレス型の物価指数やパーシェ型の物価指数でも用いられている支出の構成が変化しないとした場合の物価指数の計測方法と考え方はほぼ同じであり、実践的な所得階層別消費者物価指数の計測方法の一つであると考えている。 続いて、第3段階の課題は、同一所得階層で異時点間において家族属性が変化した場合に、どのように消費者物価指数を計測すべきかといった問題の解決である。この問題に対する解決方法は、フィッシャーの理想指数のように、2時点それぞれの家計の家族属性を固定して計測した物価指数の相乗平均を計測することであるが、この手法は、物価指数を推計する方法として実践的ではあるが、所得階層ごとに物価水準を比較する場合には、所得階層ごとに家族構成が異なり直接比較できないという欠点を持ってるため、解決方法を今後提案したい。 第4段階では、これまでの研究を基に、少なくとも1973年のオイル・ショック以降の家計の所得階層別の消費者物価指数の作成の推計を行う予定である。
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