研究課題/領域番号 |
15H03340
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 宏 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50211280)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済事情 / 経済政策 / 所得分配 / 中国 |
研究実績の概要 |
平成29年度における研究実績は以下のとおりである。 第1に,平成28年5月に北京師範大学において開催された,CHIP調査にもとづく中国の所得格差に関する国際ワークショップの成果をまとめた中国語および英文の論文集を,共同研究者とともに編集し,中国および海外の定評のある出版社から出版することを目指して,準備を進めた。中国語論文集については,平成29年12月に李実・岳希明・史泰麗・佐藤宏共編『中国収入分配格局的最新変化』(北京:中国財政経済出版社)として出版した。英文論文集については,オックスフォード大学出版会に出版のプロポーザルを行い,平成29年度末現在,出版社による審査(外部専門家による査読と出版社内部の審査)の過程が進行中である。 第2に,過去5回のCHIP調査(1988年,1995年,2002年,2007年,2013年)をまとめて作成した農村世帯所得のデータセットを活用し,中国の農村世帯所得構造の長期変動および2000年以降に導入された新たな公共政策(農業保護政策,農村税制改革,社会保障政策,農村インフラ建設など)の所得再分配効果を分析した英文論文を,共同研究者とともに完成させた。なおこの論文は,平成28年度末開催のAssociation for Asian Studies年次総会(カナダ・トロント)における口頭報告を基礎として,同学会におけるコメントを取り入れながら執筆したものである。 第3に,ミクロデータの分析に役立てるために,平成28年度に引き続き,地域別および分野別(人口・労働・財政・社会保障など)の公式統計を進めるとともに,社会保障、地方財政など本研究と関連の深い領域における制度改革や政策動向のレビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1に,平成28年5月に北京師範大学において開催された中国の所得格差に関する国際ワークショップや平成29年3月にカナダ・トロントで開催されたAssociation for Asian Studiesの2017年年次総会で口頭報告を行うなど,研究開始当初から一貫して,中国経済研究の国際的なネットワークの中で研究を推進してきた。 第2に,中国・カナダ等の共同研究者とともに,CHIP調査にもとづく中国の所得格差・貧困および公共政策に関する中国語および英文の論文集を編集した。中国語論文集については平成29年12月に刊行済みであり,また英文論文集についても平成29年度中にプロポーザルと原稿を出版社に提出し出版に向けた審査を受けるなど,研究成果を着実に,国際的に見える形で公表している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,平成29年度末時点で出版社による審査(外部専門家による査読と出版社内部での審査)のプロセスにある英文論文集の刊行に引き続き注力することで,研究成果の国際的発信を強める。また中国における所得・資産格差を,権威主義体制のもとで市場経済化が進んできたという中国固有の政治・経済的特徴と結びつけて分析する論文や,税制および社会保障制度の変遷と所得・資産格差の動向を包括的に分析する論文などを執筆することで,研究全体の総括を行う。
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