本研究では,全国的な代表性を有する世帯調査を活用して,経済改革期の中国における世帯所得格差の長期変動を分析した。主要な事実発見は以下のとおりである。(1)急速な経済成長に伴って,世帯所得格差は拡大を続けてきたが,2007年から2013年にかけて,やや縮小傾向に転じた。(2)所得格差の構造を分解すると,格差縮小傾向に大きく寄与したのは都市-農村間,沿海-内陸間という2つの意味における地域格差の縮小であった。(3)2つの地域格差の縮小は,地域間労働移動や企業投資の地域的分布など経済発展に伴う要因だけではなく,2000年代以降の公共政策における農村・内陸への重点の移行が寄与したことが確認された。
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