研究課題/領域番号 |
15H03347
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
神事 直人 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60345452)
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研究分担者 |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
蓬田 守弘 上智大学, 経済学部, 教授 (30286611)
鶴見 哲也 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (50589364)
阪本 浩章 千葉大学, 法経学部, 講師 (80758996)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 貿易と環境 / 外国直接投資 / 企業の異質性 / 国境調整措置 |
研究実績の概要 |
(1) 企業特性及び国際化戦略と汚染排出 日本企業の個票データを用いて,企業の輸出行動と汚染集約度及びエネルギー集約度との関係について計量分析を行った.製造業全体では外国のデータを用いた先行研究の知見とほぼ同様の結果が得られたが,産業別の分析により,産業毎の相違が大きいことが明らかになった. (2) 外国直接投資(FDI)の環境スピルオーバー効果と政策 「FDIの環境スピルオーバーに関する実証分析」については,ベトナム企業の個票データを用いて,FDIの流入がホスト国企業の環境への取り組みに与える影響を,投資先企業に与える直接的な効果に加えて,同一産業内および川上・川下産業の企業に与える間接的な効果について計量分析を行った.「政策の効果に関する理論分析」については,炭素税逃れを目的とした直接投資理論の構築と国境調整措置の分析を実施した.北の政府が炭素税に伴う国境調整措置(輸出品に対する炭素税還付と輸入品への炭素関税賦課)を導入しても,北の企業は炭素税回避を意図して南へ生産移転させる可能性があることや,北から南への生産移転の帰結として南北の炭素排出総量は影響を受けるが、総排出量が増えるか否かは北の企業が南へ移転させる環境技術の水準に応じて決まることなどを示した. (3) エコ商品および中古品をめぐる市場競争と国際貿易 「エコ商品に関する理論分析」については,エコ商品を需要するグリーン消費者が存在する状況で,企業が汚染集約度の低い新技術を導入する場合について,寡占競争のモデルを応用して,競争や政策の効果に関して理論的な分析を行った.「中古品に関する実証分析」については,中古品輸入国(途上国)の消費者の時間選好や環境意識の違い,中古品に対する需要に関して実験手法に基づく実証分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
企業の個票データを用いた計量分析については,初年度に計画していた課題に関して,データの整備と予備的な分析がほぼ完了し,初年度終了時点でほぼ順調に進んでいると考えられる. 理論分析に関しても,分析結果の一部を論文にまとめて国際コンファレンスで報告するなど,おおむね計画通りに進んでいる. 実験手法に基づく実証分析に関しては,まだ追加的な実験を行う必要があるものの,おおむね順調に進んでいると考えられる. 以上より,プロジェクト全体としては,初年度終了時点において当初の研究計画に沿ってほぼ順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 企業特性及び国際化戦略と汚染排出 昨年度の分析を踏まえて,企業の輸出と環境パフォーマンスとの関係に関する計量分析をさらに精緻化していく.企業の国際化が環境パフォーマンスに影響を及ぼす背景としては,一般的な生産性の向上や環境技術に対する追加的な投資,あるいは輸出に伴う財バライエティの変化など,様々な可能性が考えられる.今後は,背後にあるメカニズムの解明に向けて,理論と実証の両面から分析を進める. (2) 外国直接投資(FDI)の環境影響・環境スピルオーバー効果と政策 「環境スピルオーバーに関する計量分析」について,昨年度に行ったベトナム企業の個票データを用いた分析について,さらに分析の精緻化を行っていく.環境配慮行動に加えて,汚染処理等に関する分析も行う.「政策の効果に関する理論分析」について,先進国企業がFDIを通じて途上国へ移転させる汚染削減技術に関して,国境調整措置が企業内技術移転に与える影響について分析を行う.また,企業内技術移転を考慮した上で,汚染削減の実効性と資源配分の効率性の観点から炭素税政策の国境調整措置を理論的に評価する. (3) エコ商品および中古品をめぐる市場競争と国際貿易 「エコ商品に関する理論分析」について昨年度に行った理論分析について分析の改善を図るとともに,モデルを拡張した分析を行う.「中古品に関する理論・実証分析」について,これまでの結果をフォローアップするために,追加的な実験を行う.特に,リスク選好,時間選好などを標準的な実験手法を用いて調べるとともに,コンジョイント分析の手法を用いて中古品に対する需要を抽出する予定である.一連の実験で得られた結果について分析を行って,結果をまとめる.さらに,経済実験において抽出した選好をとりいれたモデルに基づく理論分析も行う.
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