研究課題
貿易自由化と消費者の安全・安心の保証は各貿易国政府にとってともに重要課題であるが、製品安全規制特有の問題として、これらが輸出国生産者に対して追加的費用の負担を強いる性格を持っていることが挙げられる。過剰な製品安全規制は故に非関税貿易障壁となり得る。本研究では製品安全規制特有の性格をそれぞれ分解し、それらの影響を分析することを目的としている。平成27年度においては、各ユニット(消費者ミクロ分析・企業ミクロ分析・市場レベル分析)によりデータ収集を行った。分析手法については先行研究の手法を吟味し、適宜改善を行い、予備的分析を試みた。その予備的分析の結果を9月に行われたカリフォルニア大学バークリー校での研究会で発表し、その分野の専門家により有益なアドバイスを受けた。その後さらなる改善を検討した。また、研究分担者との間で、研究手法やデータの活用法について意見交換を計4回行った。消費者ミクロ分析においては、mixed logit modelというミクロ計量手法を用いたコンジョイント分析を応用し、予備的分析を行ったところ、日本人消費者は残留有害物質、例えば残留動物医薬品の国内基準を満たす鶏肉に対しては、約2倍ほどの価格を支払うことが判明した。企業ミクロ分析においては、ベトナム、マレーシアの製造業企業は欧州の安全基準であるRoHS指令・REACH規制などに対応するためにそれぞれ50%以上の費用負担の増加があったこと、また、RoHS・REACH対応により輸出先が増えたり、輸出量が増えたりするメリットを享受していることも判明した。市場レベル分析により、日本の鶏肉輸入に対し、消費者は残留有害物質の安全性基準を満たすかどうかにより、生産国の間での代替を行っており、消費者の選好に安全性が大きく影響を与えていることが判明した。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度においては、各ユニット(消費者ミクロ分析・企業ミクロ分析・市場レベル分析)によりデータ収集を行った。各ユニットにて予備的分析を行い、結果を9月に行われたカリフォルニア大学バークリー校での研究会で発表した。その後さらなる改善を検討した。
今後は27年9月のカリフォルニア大学バークリー校での研究会で得られたアドバイスを活かした分析手法を考案し、本格的な分析を行い、その結果を学会等で発表することを目指す。また、ベトナム、マレーシア以外の国にも企業アンケートの対象を拡大しデータの拡充も目指す。
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Journal of Southeast Asian Economies
巻: 32(1) ページ: 140-162
10.1355/ae32-1h
Proceedings of the 74th Annual Meeting of the Japan Society of International Economics
巻: - ページ: 1-23