研究課題/領域番号 |
15H03350
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大槻 恒裕 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40397633)
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研究分担者 |
利 博友 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40283460)
鍋嶋 郁 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 准教授 (70720647)
本田 圭市郎 熊本県立大学, 総合管理学部, 講師 (20707848)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際経済学 |
研究実績の概要 |
貿易自由化と消費者の安全・安心の保証は各貿易国政府にとってともに重要課題であるが、製品安全規制特有の問題として、過剰な製品安全規制は非関税貿易障壁となり得る。本研究では製品安全規制特有の性格をそれぞれ分解し、それらの影響を分析することを目的としている。平成28年度においては、3つのユニット(消費者ミクロ分析・企業ミクロ分析・市場レベル分析)それぞれでデータ収集、分析手法の吟味と発展、データへの応用を行い、計5本の論文を完成した。また、国内外の学会、研究会等で発表を行った。消費者ミクロ分析においては、mixed logit model等ミクロ計量手法を用いたコンジョイント分析を応用し、日本人消費者が食品の安全に対して、30~120%程度の価格プレミアム(支払意思額と呼ばれる)を受け入れること、また所得の高い消費者ほど、また女性ほど安全性に対する支払意思額が高いことも判明した。また、国産品に対するホームバイアスも無視できないほど大きいことも分かった。鶏肉及びオレンジ等輸入食品の需要システム分析では日本の残留化学物質(農薬、動物医薬品)の基準の変更が、生産国に対して非対称な効果をもたらすこと(つまり増加する国と減少する国がある)や国産品と輸入品においても非対称な効果をもたらすことが分かった。工業製品の分野では製品安全規制の途上国の輸出企業への影響について分析した。RoHS指令・REACH規制などの製品安全規制は ベトナム、マレーシアの製造業企業の生産コストを高めることが分かったが、同時に、安全性のレピュテーション効果のため、輸出先での需要が喚起され、総合的に見ると輸出が促進されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度においては、平成27年度に進めたデータ収集、手法改良、分析を継続し、また、中間報告などを通じて得られた専門家からのアドバイスを研究に反映すべく、研究の改善を行った。 具体的には、3つのユニット(消費者ミクロ分析・企業ミクロ分析・市場レベル分析)それぞれでデータの再編集、分析手法の吟味と発展、データへの応用を行い、5本の論文を完成した。そのうち2本はPalgrave Macmillan出版の章として刊行予定である。2本はバージニア工科大学のワーキングペーパーに向けて査読中である。1本は初稿段階である。平成28年度には引き続き国内外の学会、研究会で報告も行い、専門家から有益なアドバイスを得た。研究分担者との間でも、研究手法やデータの活用法について意見交換を計7回行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、Palgrave Macmillan出版の章として刊行した2本の論文を査読付き国際学術誌に投稿すべく改良し、9月での投稿を目指す。バージニア工科大学のワーキングペーパーとして査読中の2本は、ワーキングペーパーの刊行(6月予定)の後、10月に査読付き国際学術誌へ投稿すべく完成を目指す。初稿段階の1本は8月までに分析の見直しを含む大幅な改良を行い、11月に大阪大学国際公共政策研究科紀要への投稿を目指す。また、5月にはOECDの助成を得て、研究代表者と青山学院大学の松本茂教授の主催で3日間の専門家による国際学術シンポジウムを行う。本シンポジウムは「International symposium on food credence attributes: How can we design policies to meet consumer demand」と題して、青山学院大学で行われる。ここで、研究成果の一部を報告するとともに、参加者の執筆協力により、12月までに本シンポジウムの成果を1冊の英文共編著本にまとめる。また、国内研究者向けの学会や研究会でも10月、12月に報告を行う予定である。2月には全ての研究の成果をを報告書にまとめる。
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