研究課題/領域番号 |
15H03357
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
宇南山 卓 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (20348840)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 家計調査 / ライフサイクル仮説 / 家計資産 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、家計消費がどのような要因で決定しているかを明らかにすることである。既存のミクロデータを用いた家計行動に関する分析を、国際的な研究の進展を取り入れることで深化させることに取り組んでいる。平成29年度は、以下の4つのテーマに取り組んだ。 第1に、ミシガン大学のMelvin Stephens Jr.教授と進めている定額給付金の消費への影響の分析である。家計調査では定額給付金の受取を一部の家計が報告していないという計測誤差の問題を明らかにし、その問題を一般化した上で、対処方法とその有効性について分析を進めた。第2に、信州大学の大野太郎准教授と日本の長期の貯蓄率の動向についての研究を進めた。家計調査等のミクロ統計を修正することで、マクロ統計と整合的でなおかつ属性別の貯蓄率が計測可能なデータを構築した。第3に、バブル経済崩壊直後の所得税減税が消費に与えた影響についての研究を、コロンビア大学大学院生のCameron LaPoint氏と進めた。地価の下落のタイミングが地域ごとに異なることに焦点を与えるため、地価に関するデータを構築した。LaPoint氏には来日をしてもらい、集中的に議論を進めた。第4に、日本の住宅市場の特殊性について明らかにすることを目標に、ミシガン大学のJoshua Hausman准教授、Johannes Wieland准教授との共同研究を開始した。 研究成果の中間とりまとめとして、平成30年1月には、本研究課題が主催して、一橋大学で国際コンファランス“Topics in Macroeconomics”を開催した。これまでの成果を公表するとともに、家計行動に関する国内外の研究者の研究交流を進めた。日程等の調整により、本コンファランス参加者の旅費について他の研究課題等と共同で負担することができ、結果として大幅な経費削減をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である、家計資産の保有状況を考慮した消費の決定に関して、当初予定していた通りに海外共同研究協力者との連携及びデータの入手ができている。特に、5年間の研究期間の中間年にあたり、国際コンファランスを開催することができ、中間的な成果を国内外の研究者と共有することができた。この点も考慮して、全体として「おおむね順調に進展している」と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで家計調査を中心とした政府統計に基づき、家計消費に関する研究を進めて来た。すでに一定の成果を挙げているが、引き続き国内外の共同研究者との連携を進め、より多角的な分析をすることで国際的に認知される研究を遂行することを目指す。 加えて新たなデータとして、民間企業と協力して新たな世帯調査を立ち上げることを検討している。これまでの政府統計では観察できない家計の側面を捕捉することで、新たな知見を得ることが期待できる。
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