平成30年度の成果の第1は、国勢調査と全国消費実態調査の照合である。国勢調査は全数調査であり、原理的には家計調査・全国消費実態調査の調査世帯と照合が可能である。総務省統計研究研修所と共同で、この照合作業を実行した。その結果、学歴別の消費行動が観察できるようになるなど、これまで不可能であった分析が可能となった。しかし、原理的には全国消費実態調査の大部分の世帯が照合できるはずであったが、照合割合は想定よりも低かった。データの分析の前に、その理由を解明する必要がある。 第2に、Joshua Hausman准教授( 米国ミシガン大学)、Johannes Wieland准教授(米国カリフォルニア大学サンディエゴ校)との共同研究として、拡張的な金融政策が住宅ローンを通じて消費に与える影響があるかを検討した。研究の成果として、日本の住宅ローンが政策金利と連動しないことを示し、消費が停滞する少なくとも一部の理由になっていることを指摘した。特に、変動金利の金利決定に優遇金利のシステムが採用されており、既存の住宅ローンが金利低下に反応しない原因となってることを示した。 第3に、民間企業が提供しているアカウントアグリゲーションサービスによる自動家計簿作成サービス(以下、「家計簿アプリ」とよぶ)のデータを入手し、新たな家計収支に関わるデータの収集に着手した。家計簿アプリとは、銀行口座等の情報を統合することで自動的に家計の金融取引が把握可能とする技術であり、自動で収支データを記録できる。さらに、家計簿アプリのユーザーに直接コンタクトを取り追加的な情報を収集した。この新しいデータの構築をさらに発展させるために、平成31年度以降は新たな研究課題に移行し、調査世帯を拡張した本格調査を実施する予定である。
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