研究課題/領域番号 |
15H03364
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
金子 能宏 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30224611)
|
研究分担者 |
赤井 伸郎 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (50275301)
佐藤 主光 一橋大学, 国際・公共政策大学院, 教授 (50313458)
土居 丈朗 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60302783)
塩津 ゆりか 愛知大学, 経済学部, 准教授 (60599182)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 財政・公共経済 / 財政学 / 地方財政論 / 社会保障論 / 医療経済学 / 経済政策論 |
研究実績の概要 |
少子高齢化の進行で社会保障給付が増大し社会保険料と公費負担が増加する一方で、財政赤字対策にも対応する必要があり、国の財政と地方財政の関係が、地方交付税制度のみならず、社会保障制度の維持発展と社会保障給付の適正化なども課題となり複雑化している。医療・介護保険では財政調整制度があり、地方公共事業や公共施設運営ではアウトソーシングがあり、国・都道府県と市町村の間にはプリンシパル・エージェントの関係等に関わる諸問題がある。本研究では、このような理論的側面にも着目して、社会保障と地方財政の関係が所得分配、経済厚生、財政の持続可能性に及ぼす影響を理論的・実証的に分析する。平成28年度は、文献研究とデータ収集を続けると共に、研究協力者の協力を得て研究を進めた。介護保険の就労に及ぼす影響について、OECDのデータを用いて合成統制法(Synthetic Control Analysis)による分析を行い、国際社会保障研究連盟(FISS)の大会で発表した。また、ふるさと納税(寄付)のインセンティブに関する分析を行い、2016年度日本地方財政学会で発表した。理論面では、社会保障と地方財政に関する理論的モデルの検討に関する勉強会を開催し、ソフトバジェットのある地方財政モデルを構築し分析を進めた。また、従来のモデルを発展させ、繰り返しゲームの場合にコミットメントがどの様に実現するのか、事前にある程度の事後補填を組み込んだ補助システムを構築し、その下ではコミットメントが実現しやすくより高い社会厚生が得られることを示し、この論文をミュンヘン大学マックスプランク租税法・公共経済研究所の公共経済ワークショップで発表した。国際比較研究については、日本財政学会第73回大会で社会保障と財政に関する日韓セッションを設け、韓国の研究者と貧困、医療保険、就労支援、世代会計について研究発表し意見交換を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年に引き続き、文献研究とデータ収集を続けると共に、研究協力者の協力を得て、以下のような研究を行った。介護保険が家族の就業インセンティブに及ぼす影響について、OECD諸国のデータを用いてSynthetic Control Methodによる分析を行い、国際社会保障比較研究連盟(FISS)国際セミナー(平成28年6月)及び日本財政学会第73回大会(平成28年10月)で報告した。また、ふるさと納税(寄付)のインセンティブに関する分析について、2016年度日本地方財政学会で発表した(平成28年5月)。 理論面については、社会保障と地方財政に関する理論的モデルの検討に関する勉強会を開催し、ソフトバジェットのある地方財政モデルを構築し分析を進めている。また、従来のモデルを発展させ、繰り返しゲームの場合にコミットメントがどの様に実現するのか、事前にある程度の事後補填を組み込んだ補助システムを構築し、その下ではコミットメントが実現しやすくより高い社会厚生が得られることを示し、ミュンヘン大学・マックスプランク租税法・公共経済研究所(Max Planck Institute for Tax Law and Public Finance)の公共経済ワークショップで発表した(平成29年3月)。 国際比較研究については、全米経済研究所(National Institute of Economic Research)夏季大会(平成28年7月)と国際財政学会(International Institute of Public Finance)第72回大会(平成28年8月)へ参加し、研究報告すると共に研究動向の情報収集を行った。また、日本財政学会第73回大会(平成28年10月)で社会保障と財政に関する日韓セッションを設け、韓国の研究者と貧困、医療保険、就労支援、世代会計について研究発表し意見交換を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、文献研究とデータ収集を続けると共に、地方財政分析・課税理論等の学識経験者へのヒアリングに加えて、社会保障財政と財政金融政策・財政赤字対策との関係に関する学界権威者へのヒアリングを行い、本研究の理論的・実証的研究の位置づけを明らかにしつつ、研究の取り纏めを行う。また、プリンシパル・エージェント理論に基づき、地方政府と公営・民営保育所の需給構造の実証分析を進める。理論面では、ソフトな予算制約モデルから自治体がプリンシパルとして都道府県または国からの事後的な救済を期待する時のモラルハザードや逆選択の問題をAkai Satoモデルを拡張し分析する。地方財政では受益と負担を限界的にリンクさせることで、コスト意識と財政規模を確保するため限界的財政責任が強調されるが、社会保障財源が多様だと限界的財政責任が損なわれかねない問題について、給付に対する最終的調整変数(残余変数)が不明確な財政モデルとして理論化する。 データ収集については、総務省「社会・人口統計体系」「地方財政状況関係資料」「国勢調査」「住宅統計」「地方財政統計」「全国消費実態調査」、厚労省「人口動態統計」「介護サービス施設・事業所調査」「国民生活基礎調査」「介護保険事業状況報告」「後期高齢者医療事業状況報告」「患者調査」等により収集する。国保・介護保険財政については、国保中央会のデータ、「介護保険財政安定化基金貸付等状況」等により収集する。 国際比較研究は、日本経済学会でのOECDデータを用いた介護保険の効果分析の報告、国際社会保障研究連盟(FISS)国際セミナー、国際財政学会(IIPF)、全米経済研究所(NBER)夏季セミナー等の参加を通じて、我が国の社会保障と地方財政の特徴と課題を把握し最新の研究動向について情報収集する。 成果普及のため、ディスカッションペーパー、学術雑誌、公開のセミナー等で成果を公開する。
|