研究課題/領域番号 |
15H03367
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内田 交謹 九州大学, 経済学研究院, 教授 (80305820)
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研究分担者 |
森保 洋 長崎大学, 経済学部, 教授 (10304924)
小野 慎一郎 大分大学, 経済学部, 准教授 (20633762)
閔 廷媛 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (30632872)
松本 守 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (50435096)
阿萬 弘行 関西学院大学, 商学部, 教授 (70346906)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コーポレートガバナンス / 独立社外取締役 / 機関投資家 / 法制度 / 文化 / 組織学習 / M&A |
研究実績の概要 |
本研究では,①近年の日本におけるコーポレートガバナンス改革の効果、②国連責任投資原則(PRI)策定後の企業の社会的パフォーマンスの変化、③日本企業の組織学習能力とM&Aの成否、④国際財務データ及び日本・中国・韓国・フランス・イギリスのデータを用いた法制度や文化特性、企業行動の分析を行っている。 ①については、スチュワードシップコード、機関投資家持株比率が高い企業ほどスチュワードシップコード、ガバナンスコード策定後に社外取締役を2名以上選任する確率が高く、株主還元も多いことを発見した。②については、機関投資家持株比率の高い企業ほど、PRIが策定された2006年以降に環境スコアを改善する確率が高いことを発見し、国際カンファレンス2件で報告した。③については、1995年以降の日本のM&Aの包括的なデータベースを構築し、発表時における株価反応を計算し、M&Aの経験回数や失敗経験が次回のM&Aの成功につながるか、どのようなガバナンス構造の企業でより学習効果が顕著か等を検証した。 ④については、国際財務データを用いて、個人主義的な国の企業ほど業績悪化時にリストラクチャリングを実施する確率が高いことを発見するとともに、イギリス、フランス、日本のインデックス企業の2010年~2015年における株主総会の投票結果と議決権行使助言、機関投資家持株比率のデータベースを構築し、分析を行った。さらに、規制当局の監督の厳しい中国の公募増資と第三者割当増資のマーケットタイミングに関する分析を実施し、国内外の学会で報告するとともに、Journal of Corporate Finance に論文を掲載した。さらに日本及び財閥構造が定着している韓国企業における企業間信用と企業価値の関係を分析した。 最後に、上記の中心的課題以外にも、各メンバーが本プロジェクトで得た知見を生かして、論文を刊行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はプロジェクト2年目であり、すべてのテーマについて、最大の目標であった分析に必要なデータベースの構築と基礎的な分析の実施がほぼ終了した。具体的には、第一に、スチュワードシップコード、コーポレートガバナンスコード策定時における株価反応を分析するために株価データベースが完成しており、さまざまな企業特性との関係を分析できる状態になった。 また、日本のM&Aに関する膨大なイベントデータを構築し、全てのイベントについて取引内容と株価反応の計算が終了したため、M&Aについて、どのような経験・学習が、どのようなM&Aの実施にポジティブな効果を持つかを分析する準備が整った。さらに、世界50か国以上の国際企業財務データ、イギリス、フランス、日本のインデックス企業の株主総会の投票結果と議決権行使助言、機関投資家持株比率のデータベースが完成している。 既に分析結果を提示し、論文執筆や学会報告を実施したプロジェクトもある。例えば、中国の公募増資におけるマーケットタイミングの研究はコーポレートファイナンス分野のリーディングジャーナルである Journal of Corporate Finance に掲載され、中国の第三者割当増資に関する研究は学会報告を行っている。日本のベンチャーキャピタルに関する研究はAsia Pacific Journal of Financial Studies に掲載された。機関投資家持株比率とPRIが策定後の環境スコアを改善確率の関係については、国際カンファレンス2件で報告を行っており、間もなく国際学術誌への投稿予定である。さらに、本プロジェクトで得た知見を生かした研究が、国内外の学術誌に論文として刊行されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はプロジェクト最終年であり、各テーマにおいて、論文(ワーキングペーパー)の執筆及び学会等での報告が目標となる。全てのテーマに関与している研究代表者・内田は本年度本務校よりサバティカルを得ており、十分な研究時間を確保できるため、内田が各プロジェクトの分析・論文執筆を主導し、適宜研究分担者に分析や論文執筆の指示を行う形で研究を進める。研究分担者との打ち合わせやディスカッションには、遠隔会議システムを活用する。なお、内田は本年度、本プロジェクトを基課題とする国際共同研究加速基金のサポートを得て、米国 University of Utah にVisiting Scholar として滞在しており、受入教員のJeffrey Coles 教授と頻繁にディスカッションを行える環境にある。本プロジェクトの各テーマについて、Coles 教授ならびに関連分野の研究者と積極的にディスカッションを行うことで、研究のクオリティを高めていく予定である。また、米国に滞在している地の利を活かして、可能な限り、国際学会・セミナーでの研究報告を行う。
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