研究課題/領域番号 |
15H03369
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
杉原 薫 政策研究大学院大学, 政策研究科, 特別教授 (60117950)
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研究分担者 |
神田 さやこ 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (00296732)
西村 雄志 関西大学, 経済学部, 教授 (10412420)
木越 義則 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00708919)
小川 道大 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30712567)
小林 篤史 政策研究大学院大学, 政策研究センター, 客員研究員 (40750435)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インド / 長期の19世紀 / 外国貿易 / 国内交易 / 物価 |
研究実績の概要 |
第1回研究会(4月21日於GRIPS)では、全員が研究の構想を発表した。杉原は、二つの基本資料であるBritish Library(BL)の統計と英国議会文書(BPP)所収の統計の関係について説明し、共通理解を図った。杉原と小林は、「19世紀中葉照合ペーパー」プロジェクトを立ち上げ、BL統計とBPP統計が交差する1834-1870年頃の地域別、商品別データを比較することで、いかにして1868年頃に「英領インド」統計が形成されたか、その過程でどのように「外国貿易」「沿岸交易」「管区内交易」が分化していったかを明らかにすることにした。小林はロンドンでデータを収集、加工し、杉原研究室で谷中紘子さんにそれらを入力、加工してもらい、多くの新事実が明らかになった。 第2回研究会(7月19日於京大)では、杉原が、1850年のボンベイ輸出(BL統計)を事例にBPP統計の形成過程を論じ、Om Prakash教授にコメントをいただいた。第3回研究会(9月7日於GRIPS)では、木越が中国を事例とした貿易統計データベースの構築、小川が19世紀後半のインド西部の域内交易、谷口が19世紀前半における鋳造所データと貨幣鋳造額について、それぞれ報告し、それらを踏まえて、杉原、西村、木越がロンドンに出張(9月18日~26日)、小林とともにBL, LSEで資料の閲覧や収集を行うとともに、9月25日にLSEでTirthankar Roy, Kent Deng, A. Irigoin, Debin Ma, G. Federicoなどの参加を得て、国際ワークショップを共催し、5名が報告した(西村はアジアのイギリス系銀行について報告)。さらに、第4回研究会(10月28日於GRIPS)では、Bin Wongを討論者としたワークショップを行い。4名が報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には、予想を上回るスピードで多くの新しい事実が明らかになった。基本となるBL統計については、小林がロンドンに1年間滞在したこともあって、3管区(ボンベイ、カルカッタ、マドラス)の統計の収集が、1800-1875年についてほぼ完了した。それと並行して、杉原研究室では、19世紀中葉の国内交易データを地域別、商品別に詳しく入力する作業を進めた。1850年については、3管区それぞれの統計を外国貿易と国内交易に分け、とくに国内交易について、商品別・地域別構成を詳細に明らかにしつつある。さらに、3管区の主要3港について、輸移出入データのマッチング作業を行う過程で、マラバー・コロマンダル海岸の多数のマイナーな港のデータも詳細に収集することができることも明らかになった。 その結果、(1)3管区のデータには外国貿易と国内交易が混在しているが、1868年以降、外国貿易だけが英領インドの統計として抽出されていき、その過程で統計収集方法が一元化したこと、(2)残された管区間の交易、管区内の交易については、3管区でバラバラに、かつ非継続的に刊行されているが、入手できるもののなかには商品別構成についてのきわめて詳細な情報(物価情報を含む)が大量に存在すること、(3)したがって、膨大な作業を必要とするとはいえ、原理的には19世紀中葉の国内交易の全容をある程度数量化できる可能性があること、が明らかになった。 さらに、メンバー間の交流も、きわめて活発かつ多角的に行うことができた。予定していた世界経済史会議での多くの報告のほか、9月のLSEでのワークショップ(共催)をはじめ、多くの国際的な対話の場を設けたことで、数量的研究から各地域の言語資料にもとづく研究にいたるまで、研究史を広い範囲で共有することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も、「19世紀中葉照合ペーパー」プロジェクトのコンセプトにもとづき、統計の入力、加工作業を継続し、必要に応じてBL統計をロンドンから補充する(実はマイナーな港の統計など、新しくその重要性に気付いた部分は、まだ完全には収集できていない)。統計の加工作業は、現在は19世紀中葉に集中しているが、谷口が引き続き19世紀初期の統計を、小林、杉原が初期から中期を分担し、しだいに幅を広げていきたい。ただし、地域別構成・商品別構成ともにフォーマット(収録範囲など)の違いやその変遷を詳しく確認しつつ、作業を進める。作業がルーティーン化した時点で、一部を大学院生に委託することも考えている。本年度は、杉原を含む、少なくとも2名が海外で調査、資料収集を行う。神田はインドに1年間滞在する。 西村、神田、木越、小川、谷口、小林の個別研究についても、海運統計、通貨・金融統計、物価指数の作成方法、ベンガル・ボンベイ管区の地域史研究などで本研究と多くの接点を持っているので、アジア経済史との交流も視野に入れつつ、本研究の連携を強めていきたい。国内での研究会は主としてGRIPSで、メンバーを中心としたワークショップ形式で開催する。初年度の国際的な接触から得た多くのコメントに対応するのが本年度の大きな課題である。 さらに、GRIPSの新学術領域や、いくつかの関連する科研やNIHUのプロジェクトとも交流しつつ、内外の研究者との対話も続ける。杉原は、5月にロンドンのワークショップで成果の一部を報告する。これらによって、本来の目的である、外国貿易、国内交易、物価動向の関係に迫ることができる。 メンバーの一部は、単独または共同でワーキング・ペーパーを刊行する予定である。一部の成果については、査読つき雑誌に投稿することを考えている。
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