研究課題/領域番号 |
15H03383
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研究機関 | 埼玉学園大学 |
研究代表者 |
菰田 文男 埼玉学園大学, 経営学部, 教授 (60116720)
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研究分担者 |
井口 知栄 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (20411209)
林 倬史 国士舘大学, 経営学部, その他 (50156444)
中山 厚穂 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (60434198)
荒井 将志 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (70549691)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テキストマイニング / データマイニング / 知の構造化 / BOPビジネス / 国際化 / 日本企業 |
研究実績の概要 |
本研究は2つの柱から成っている。第1の柱は(1)コンピュータパワーの飛躍的進歩、(2)デジタル化されたテキストデータの増加の二つに支えられて、研究が急速に進みつつあるテキストマイニングのための手法を開発すること、第2の柱はその手法を検証するために近年のグローバル化の進展を背景として大きな注目を浴び始めながら、日本企業の取り組みが欧米から大きく遅れているBOP(Base of Pyramid)ビジネスを事例として取り上げ、日本企業のBOPビジネスが成功するための条件や逆に阻害要因をテキストデータの解析を通じて発見することである。第1の柱のためには、まずなによりも優れたテキストデータを収集することが重要であるが、しかしそれだけでは不十分であり、そのテキストを解析に適した形式に編集することが不可欠である。この編集作業は「知の構造化」と言われる作業であるが、この構造化を的確におこうことを重視しそれに依拠して解析を進め、多次元尺度法などの多変量解析の手法、ネットワークの密度分析などの各種の統計解析手法を分析目的に応じて適用する。第2の柱はフィリピン、ベトナム、バングラデシュなど、BOPビジネスが注目されている国を対象として、現地調査と国内での企業に対するヒアリング等を通じてマイニングに適したテキストデータを収集するとともに、BOPビジネスの成功要因と阻害要因を発見ことを目的とする。この二つの柱を有機的に結びつけることによって、企業の実践に資することができるだけの優れた知識の獲得を可能とするテキストマイニング手法を得るとともに、グローバル展開が遅れている日本企業の新しい戦略をBOPビジネスに焦点を当てて解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は3年計画の研究の第一年度であるので、二つの柱のいずれも準備作業が中心となった。まず、第1の柱については、BOPビジネスを検証するために役立つテキストデータを収集することが必要である。そのためにまずウェブデータを網羅的に収集する手法を検討し、ウェブクローラーの開発を試みた。しかし結果的に、現在のウェブデータの多くはpdfファイル化されるようになっており、また著作権問題もあり、さらにはホームページの構造が各サイト毎に異なっている等々の理由から、多大な労力をかけたにもかかわらず、実用に耐えるだけのウェブクローラーは開発できなかった。したがって、網羅的に収集できるデータとして、日本経済新聞の記事およびJETROの報告書をダウンロードし、解析をおこないつつある。最終的な結果は未だ得られていないが、このマイニングからBOPビジネスの成功のためには「NGOの活用」「持続的なパートナーシップ」「流通システムの整備」等が重要であるという暫定的に結論を得ており、論文として刊行のための作業をおこなっている。 第2の柱としては林、井口、荒井の3名が、2016年1月30日~2月3日にフィリピンのSan Pablo市に本部が置かれているNGO組織のCARD(Center for Agricultural and Rural Development)、 CARD Bankを訪問しヒアリング調査をおこない、さらにこの3名がバングラデシュのグラミン銀行を訪問しヒアリングをおこなった。目的はフィリピン、バングラデシュにおける貧困層対策やNGOの有効性を知ることである。さらに農村地区を訪ね、BOPビジネスの成功に不可欠と考えられるマイクロファイナンス現場で実体調査をおこなった。 第一年度であることもあり、二つの柱は未だ連携がとれていないが、準備作業として第二年度の研究の基礎作りをおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度は第1、第2の柱ともに前年度の研究を継続し、さらには両者の連携を図ることを目指す。 まずテキストマイニング手法の研究については、新聞記事やさまざまな研究機関が公表している研究報告書・調査報告書をマイニングすることの有効性が第一年度の研究から実証されたので、このようなテキストデータをさらに体系的・網羅的に収集する。とくにJICAの公表する成果はBOPビジネスの理解にとって大変有効であるという感触を得ているので、これを中心として収集し解析を試みる。 解析手法としては、従来の多くのテキストマイニング研究がコンピュータアルゴリズムのみに依存し、知識を発見することを目指しているために、結果的にテキストデータに含まれている豊かな知識を抽出することに失敗しているという認識に立って、知識の構造化手法を適用するとともに、ある重要単語を起点とし、共起関係と相関値を利用して出現頻度の少ないにもかかわらず重要な意味を持つ単語を発見し、ネットワーク図を作成するという手法を中心に研究する。 第2の柱についてはフィリピン、バングラデシュに加えてベトナムなども含めて第一年度と同様の現地調査をおこなうとともに、日本企業に対するヒアリング調査をおこなう。第一年度の調査から、NGO/NPOの有効性が確認されたが、しかしその運営が成功している組織やそうではない組織があることも分かったので、この違いが何に起因するのかなどを発見し、さらにマイクロファイナンスや流通チャンネルの整備等のBOPビジネスの成功要因を発見する。 さらに両者の研究成果を照合する。例えば、第二年度の成果からテキストマイニングからは「NGO」の強化が重要であることが確認されているが、これを現地調査やヒアリング結果と対照することによってBOPビジネスの成功に必要な条件を発見するとともに、テキストマイニング手法のさらなる進化を目指す。
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