研究課題/領域番号 |
15H03392
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
米山 高生 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00175019)
|
研究分担者 |
小暮 厚之 慶應義塾大学, 総合政策学部(藤沢), 教授 (80178251)
山本 信一 立命館大学, 経済学部, 教授 (90388108)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | レセプトデータ / 健康診断 / 医療保険 / 健康保険 / 健康増進型保険 / マイナスのモラルハザード |
研究実績の概要 |
本年度は、JMDCから購入した診察・健診データベースの分析により一定の研究成果が達成された。この研究は、医療保険に関する実証研究を行う山本=米山班とビッグデータ分析を担当する小暮の二班からなるが、前者では、医学部所属研究者との共同研究で、健康増進活動が医療費に与える影響の研究を進め、現在、海外ジャーナルへの投稿準備中である。また特定の成人病に絞って、健康増進活動が将来の医療費削減にポジティブな影響を与えることを計量分析で明らかにした論文が日本の学術誌(査読付)に掲載された。後者も国際学会発表を行うなど、最終年度にむけてまとまった成果を得るべく準備している。 本年度に進展した実証研究の概要について具体的に述べると次のようになる。この研究は、特定の成人病の場合、直前まで健康増進活動をしていた人としていなかった人で医療費にどのような影響があるのかを明らかにするというものである。レセプトデータおよび健診データから、直前の医療費と4年後の医療費が分かる人であり、かつ健康増進活動をしていた人としていない人が判明する人のデータを抽出し、計量分析をおこなった。その結果、成人病の発症までに健康増進活動を行っていた人の方が、行っていなかった人よりも医療費の増加率があきらかに小さいことが統計的に明らかにされた。日ごろの健康増進活動は、長生きを促進するという意味では医療費実額の増大を予測させる。皮肉なことであるが死亡すれば医療費はかからないからである。しかしながら、医療費の増加率に対して抑制的な影響を及ぼすことが明らかにされることにより、日常における健康増進活動の意義が再確認される結果を導いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、健康年齢というキーワードからより「保険」および「保険制度」に引き付けた問題意識をもって研究にあたってきた。日本医療データベースセンター(JMDC)から提供される診察・健診データベースはきわめて情報量が多く取り扱いが難しいものであるため分析に時間を費やしたが、おおよそ諸問題を克服して、おおむね順調に研究を進めることができた。ひきつづき、当初の目的とした成果を出すために頑張りたい。
|
今後の研究の推進方策 |
残された1年間で、健康保険制度全体に対して具体的な提案を行うことは難しいが、最近注目を浴びている健康増進型保険の実現可能性という切り口から、政策的議論の基礎となるような実証分析を提供することによって、課題を果たすことができる。学会発表としては、国際学会(APRIA)および国内学会(日本保険学会・日本保険リスク年金学会など)の報告を、学会誌掲載を視野に入れて、行なう予定である。
|