研究課題/領域番号 |
15H03394
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
平木 いくみ 東京国際大学, 商学部, 准教授 (60367026)
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研究分担者 |
恩藏 直人 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70194652)
上田 隆穂 学習院大学, 経済学部, 教授 (40176590)
守口 剛 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (70298066)
石井 裕明 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (50548716)
外川 拓 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (10636848)
永井 竜之介 早稲田大学, 商学部, 助手 (80732643)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 感性刺激 / 店舗内購買行動 / 感情 / 感覚 |
研究実績の概要 |
本年度は「既存研究のレビューと定性的調査による問題の明確化」を目標とし、以下の作業を進めた。 第1に、海外および国内のトップジャーナルを中心に当該分野に関わる研究を包括的にレビューし、研究潮流の全体像を把握するとともに、当該分野において何が解明されており、何が未着手なのであるかを把握した。その中で「Customer Sense」と題する洋書の翻訳作業を進めている。内容は、消費者が有する5つの感覚についてそれぞれ個別の章を設けて説明したものであり、事例が豊富であるだけでなく、各章の記述がいずれも学術的に裏付けられたものであった。翻訳本の出版は科研プロジェクトを進める上で有用であるとともに、当該分野に関心を有する国内の研究者にも有益であると考えたことが出版の動機である。翻訳作業は平木、石井、外川の3名で進め、恩臧には出版本の解説を担当頂いた。「感覚マーケティング」というタイトルで2016年4月に有斐閣から出版されている。 第2に、「消費者の知覚と感情」というテーマで科研プロジェクトにかかわるシンポジウムを開催した(2015年7月)。Frank Alpert氏、石井裕明氏、永井竜之介氏・恩藏直人氏他に発表いただいた。 第3に、レビューの成果発表である。永井・恩蔵は2015年11月7日開催された第51回消費者行動コンファレンスにて学会発表を行った。また各自、学術誌において論文発表を行っている(例えば2016年3月MJ誌の石井・平木論文等)。 第4に、コープさっぽろ協力のもと、定性調査および探索的な店舗実験を実施した。定性的調査は2回に分けて実施され、店舗マネジャーへインタビューを行っている。店舗実験はコープ10店舗の協力を経て行われて、買物かごのカラーを操作した店舗実験および香りを用いた店舗実験を実施した(H28年3月)。調査結果に基づき、H28年度の本実験を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目の本年度は「既存研究のレビューと定性的調査による問題の明確化」を目標としていた。各メンバーで国内外の論文を広くレビューし、その中で本テーマと関わりが深い「Customer Sense」と題する洋書の翻訳作業を進められたことは、本科研プロジェクト進める我々メンバーにとって多くの有用な研究知見を獲得できたと考えている(翻訳書は、平成28年4月に有斐閣から出版されている)。 また協力小売店舗のマネジャーにインタビュー調査を実施し、定性調査を通して、今後の店舗実験を進める際の有用な示唆を得ることができた。学術的知見と現場との知見を照らし合わせることにより、実務へ応用可能な有意義な仮説の立案が可能になっていると考えている。 他にも、海外の研究協力者を日本に招き、研究テーマに関する知識の提供を受けたり、本プロジェクトの海外展開において有用な知見を多くいただくことができた。 以上から、1年目の目標である本科研プロジェクトにおける問題の明確化にかかわる作業は極めて順調に進んだと考えられる。作業の過程で得られた知見は、各メンバーが論文作業を進めているだけでなく、シンポジウムや学会発表を行ったりして一般に公開することにも努めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究目的は、個別の感性刺激による単独効果を店舗実験から明らかにすることである。具体的には、香りや照明などの店舗空間における感性刺激が、それぞれどのような感情を引き起こし、結果的に店舗内購買行動にどのような影響を及ぼすのかについて明らかにする。いずれの調査も、実験室実験をへて店舗実験を実施していく。 実験室実験は、「感性刺激の選択」と「刺激の効果の検討」の2フェーズに分けて行われる。特に「刺激の効果の検討」では、実験的操作において店舗内で経験する特定の感情などを感じさせたうえで、選択した刺激の影響を確認していく。実験室実験の参加者は大学生を予定しており、メンバーで分担して実験準備や分析を担当する。 店舗実験においては、実験室実験で明らかになった傾向が、実際の購買場面においても同様に生じるかを確認する。感性刺激それぞれについて、店舗環境を統制した調査を展開するが、調査計画に応じてPOSデータ分析、滞店時間調査、出口アンケート調査を実施していく。実験室実験と店舗実験を組み合わせることにより、厳密性と現実性の双方を有した知見を導き出すよう努力する。 本年度の調査は、H27年度に実施したいくつかの探索的な店舗調査に基づいて設定していく。1つは香りの研究であり、店舗の入口で噴霧した香りの持続効果を検証している。もう1つは、カラーの研究であり、買い物かごのカラーを操作した店舗調査を実施してしている。これらの分析結果を踏まえて、本年度の研究へとつなげていく予定である。 また北海道に拠点を置く小売店舗には引き続き、本プロジェクトの協力をいただくが、関東近県の流通業者の協力も得て、プロジェクトの充実を図っていく予定である。
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