研究課題/領域番号 |
15H03396
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
崔 容熏 同志社大学, 商学部, 教授 (70315836)
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研究分担者 |
結城 祥 中央大学, 商学部, 准教授 (10554321)
原 頼利 明治大学, 商学部, 専任教授 (30366900)
久保 知一 中央大学, 商学部, 准教授 (40376843)
李 東俊 名古屋商科大学, 商学部, 教授 (40585197)
北島 啓嗣 福井県立大学, 経済学部, 教授 (60398980)
高田 英亮 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (90508631)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マーケティング・チャネル / 取引費用アプローチ / 関係特殊的資産 / 吸収能力 / カスタム・チャネル・サービス / ARAモデル / ケイパビリティ |
研究実績の概要 |
近年のチャネル研究を牽引する主要理論の一つである取引費用アプローチは、取引の諸次元によってチャネル関係の構造が決定づけられるという主張を含んでいる。しかし、多数の研究によって、取引費用アプローチに基づくチャネル研究は、企業固有の資源や戦略的意図の重要性を看過していると批判されている。また、暗黙の裡に取引費用の最小化という「負の側面の回避」を過度に強調することによって、チャネルの持つ価値創造機能を軽視する結果をもたらしたと指摘されている。 2015年度には以上の問題点に着目し、チャネル研究会の定期的な開催を通じて、研究仮説の開発と新たな調査設計のための議論を重ねた。また、2016年度にはIMPグループのARAモデル(行為者・資源・行動モデル)などの知見を借用し、取引費用アプローチの限界点を補完する分析モデルを提示し、その経験的妥当性の検証を試みた。主な発見物は次の通り要約できる。 第1に、関係特殊的資産はマーケティング・チャネルの差別化効果を高める。第2に、チャネル・サービスが特定の製造業者にカスタマイズされているほど、チャネル・パフォーマンスは増大する。第3に、関係特殊的資産のパフォーマンス効果はチャネル統合度が増すにつれに一層高まる。第4に、カスタム・チャネル・サービスのパフォーマンス効果は製造業者の活用能力が高まることによって一層高まる。 従来のチャネル研究で負の側面が強調されがちな関係特殊的資産の正のパフォーマンス効果を発見したことは意味のある知見である。また、取引費用アプローチに依拠した従来のチャネル研究は、関係属性とガバナンスの関係に焦点を当てることが多かったが、関係属性のパフォーマンス効果、本研究ではガバナンスやケイパビリティの調整効果を取り入れ、より包括的なモデルを提示したことも注目に値する。以上の研究成果はIMPや日本商業学会など国内外の学会で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2015年度の研究計画が予定より少し遅れ、一部の研究予算を2016年度に繰り越した。定期的な研究会を通じて、欧米の最新チャネル研究をフォローし、新たな分析モデルと調査設計、そして分析方法論に関する議論を重ねたが、先行研究のレビュー作業および独自仮説の提唱に予想外の時間を要してしまったのがその原因である。当初の計画通りであれば、2015年度中に新規のサーベイを実施する予定であったが、結果的には2016年度末に2種類の調査の実施することになった。 2015年度から繰り越した研究費は、主に国際学会(IMP)と海外ジャーナル(Industrial Marketing Management)への投稿に際して、英語論文の校正費用として利用した。IMPは産業財マーケティング分野では世界トップレベルの学会であり、報告論文の採択率も低い難関の学会であるが、我々の分析結果に興味を持ってもらい報告することが出来た。また、同学会の機関誌であるIndustrial Marketing Managementへの投稿論文は、現在1stラウンドを通過し、2ndラウンドに進んでおり、掲載を期待できる段階にきている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に複数の国内外の学会で発表した分析内容を補強するための後続調査を2016年度末に2種類実施している。2017年度はその2種類の調査データを集中的に分析し、下半期には研究成果を論文にしていく予定である。 ただし、2017年5月現在時点で両調査の回収率が思わしくないために、早急に追加調査を実施し、分析可能水準のサンプル数を確保することに力を入れる。伝統的な取引費用分析の枠組みからマルチ・チャネルという新たな現状を分析するための調査と、資産特殊性の内生性バイアスを考慮に入れチャネル統合・分離の問題を検討するための調査である。
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