研究課題/領域番号 |
15H03397
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
崔 相鐵 関西大学, 商学部, 教授 (10281172)
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研究分担者 |
向山 雅夫 流通科学大学, 商学部, 教授 (00182072)
白 貞壬 流通科学大学, 商学部, 准教授 (60400074)
趙 命来 香川大学, 経済学部, 准教授 (60582228)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ファミリービジネス論 / 国際化行動 / 新興国出身 / 地元小売企業 / 先進国出身 / 先端的国際小売企業 / 華人ネットワーク / グループ力 |
研究実績の概要 |
今年度の研究では、ファミリービジネス論の視座からの分析を積極的に取り入れようとしていた。2017年4月に公表した論文「グローバル事業を成功させる新興国の地元小売企業」では、新興国における後発の地元小売企業の躍進について、先端的国際小売企業と国際化行動パターンのどこがどう異なっているかという課題を明らかにした。小売国際化における両者の主体は、進んでいるか後れているかを問わず、流通近代化や市場環境の違いを超えてファミリービジネスが重要な地位を占めている点で共通している。 先進国出身の国際小売企業のファミリービジネスの優位性は先端的小売ノウハウ・豊富な国際化経験を通じた情報知識や専門知識をもった人材の確保で専門化の利益を追求しようとしていた。それに比べ、新興国出身の後発の地元小売企業は、意思決定の速さと巨大な資金の調達を活用し、規模の経済性を発揮することで国際競争力をつけることができた。とりわけ、新興国出身のコングロマリットは、人的資源や小売ノウハウ・情報知識の制約を克服するために、華人ネットワークやそのグループ力を生かしてグローバル事業の成功に挑んでいた。 そこから導きだされた結論を検証するために、財閥企業の存在が大きいフィリピンにおける小売・サービス業調査を行った。とりわけ、華人ネットワークやそのグループ力を生かして積極的にグローバル事業を展開している外食チェーン企業グループ、ジョリビーに関するレクチャーから、先行研究が見逃していた新興国出身のコングロマリットの国際化行動を考慮すべきであることが裏付けされた。 小売・サービス業の国際化のダイナミズムを表す、より説明力のある高い理論モデルを構築するために、ファミリービジネス論に一層注目することは、本研究で提示された小売・サービス業の国際化研究における目的の達成のための一つの手がかりになるということが再び確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に大きな変更もなく、予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
小売国際化の主体を後発の現地小売企業にまで広げ、その企業の小売国際化に挑むプロセスを整理する中で、欧米出身の先端的小売企業と異なる国際化行動が浮き彫りになった。 しかし、それは現時点では試論の段階にとどまっている。それをより一般化するためには、ファミリービジネス論、とりわけ開発経済論ベースのファミリービジネス論における成果の取り込みが有効であると思われる。ファミリービジネスが近代的な企業形態に転じるのではなく、あくまでファミリービジネスであり続けるために経営的限界をいかにして克服するのかに関するそこでの議論は示唆に富んでいる。さらに、新興国内におけるファミリービジネスの成長に焦点を当てるそこでの議論の延長として、国内成長が国際化に結びつく論理とプロセスの解明も不可欠である。こうした観点に立って、タイやフィリピン市場以外の新興国市場のコングロマリットを候補群として徹底的に事例分析することが今後の課題であろう。 その課題を遂行するために、ファミリービジネス論や開発経済論、そして華人ネットワーク論の文献研究を続けながら、事例探索とモデル構築に力を注ぐ。それと並行して、昨年度と同様に、現地に赴いて市場実態に関するレクチャーを受けつつ、アジアを中心とする新興国における先進事例に関する探索を進める。また、選定された事例に関しては、構築した理論モデルに当てはまるかどうかを検証するために、徹底的な分析を行う。
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