研究課題/領域番号 |
15H03408
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
黒田 由彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30170137)
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研究分担者 |
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
室井 研二 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (20310013)
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
黒田 達朗 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00183319)
山岡 耕春 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183118)
松木 孝文 大同大学, 教養部, 講師 (90589269)
丹辺 宣彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90212125)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大規模災害 / 〈減災-復興〉総合システム / レジリエンス / 脆弱性 / 臨床社会学 |
研究実績の概要 |
南海トラフ巨大地震で大きな被害が予測されている名古屋市南区を対象として、南区役所防災担当部署、南区星崎学区消防団長、南区星崎学区学連会長に対してインタビュー調査を行った。星崎学区は、内閣府が進める「地区防災計画モデル制度」において、名古屋市内でただ1か所「地区防災計画モデル地区」(全国で22箇所)に選定された地区である。ここで、地区防災計画とは、地域に住んでいる住民や、事業を営む事業者が、主体的に自分たちの住んでいる「まち」の防災に関して策定した計画を指す。東日本大震災において、地域住民や事業者による自助・共助の精神に基づく自発的な防災活動の重要性が改めて認識され、2013年(平成25年)の災害対策基本法の改正によって設置された制度である。地区防災計画は、従来の市町村が定める地域防災計画とは違い、行政区を単位とする必要はなく、集落、商店街、自治会、工業団地、マンションなど、自由な対象範囲で防災計画を策定することができる。策定した地区防災計画は、市町村の防災会議に提案し、了承が得られれば、地域防災計画のなかに正式に位置づけられる。 さらに、同じく南海トラフ巨大地震で大きな被害が予測されている紀伊半島の大紀町錦地区、南伊勢町田曽浦地区、同神津佐地区において、プリペアードネスに関する調査を行った。 以上の調査によって得られた知見は、(1)大都市において行政末端の防災・減災に関しては、法が定める最低限の機能しか果たす能力がないため、住民組織の主体的努力が果たす役割は大きいが、地区によってその能力に大きなばらつきがあること、(2)僻地自治体で統計的に財政力が弱い自治体であっても、首長や防災担当職員次第で、実質的に有効な防災対策が実行できること、以上である。常識的に見て利用可能な資源の多寡は、減災能力に直結しないと総括できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南海トラフ巨大地震防災推進対策地域、および首都直下地震対策推薦地域に指定されている市町村を対象とした調査の実施が当初の予定より遅れているが、他方、臨床社会学的実践に向けた準備は当初の予定よりも先に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
申請段階で平成28年度に計画していた高知市における住民意識調査は、実施の是非、実施時期に関して検討する。その理由は、 名古屋市南区において、当初の予定を拡大して名古屋市南区の他の学区においても住民意識調査を行う必要がでてきたからである。初年度調査の結果、当初の予定以外の学区において客観的危険度と住民意識の乖離が顕著であることが明らかとなったことがその背景にある。
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