「新たな社会問題」空間としての被差別部落と都市下層の再編過程の研究

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15H03410
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 野口 道彦 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 名誉教授 (00116170)
• 研究分担者: 古久保 さくら 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 准教授 (20291990) ; 島 和博 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特任研究員A (50235602) ; 阿久澤 麻理子 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 教授 (20305692) ; 岸 直子 (齋藤直子) 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特別研究員 (90599284) ; 熊本 理抄 近畿大学, 人権問題研究所, 准教授 (80351576) ; 桜井 啓太 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 講師 (90751339) ; 櫻田 和也 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (70555325)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 階層 / 部落問題 / 社会移動 / 都市問題 / 差別 / 街づくり / 地域福祉 / ジェンダー

研究実績の概要

本研究で行なったことは、1)被差別部落(大阪市S地区）における生活実態アンケート調査を実施し、得られたデータを分析、(2)国勢調査データや既存の官庁統計データを活用し、大阪市内の被差別部落12地区とそれぞれの周辺地区、それ以外の大阪市全体を比較分析、(3)被差別部落出身の教師たちや大阪市内の被差別部落の関係者から聞き取り調査を行い、2002年の特別措置法後の変化がどのように受けとめられているのかを明らにしたことである。
S地区の生活実態アンケート調査の分析では、地域のさまざまな諸活動への関心や参加の状況、福祉・医療サービスへの関心や利用状況、地域で発行されている情報誌への関心などについて、新たに転入してきた人々と古くから当該地区で生活している人との間でどのような違いがあるのかを明らかにした。
そのような分析を通して、被差別部落を起点・終点とする多様な人びとの「移動」の増加していること、被差別部落へのまなざしの変化と差別を残存しながらも、あらたなネットワークが形成されつつあること、2002年の特別措置法後、地域では創意工夫をしながら、さまざまな地域福祉活動が展開されており、それが地域の新しい魅力となって人を惹きつけていることが明らかにした。そうして点では、「社会的に不利な立場」にある人びとを包摂しながら、被差別部落は新たなコミュニティとして「変容」しており、今後あらたな展開をみせる可能性を予感させるものである。
定例的に開いている研究会では、S地区の関係者も交えて、データのもつ意味を議論してきた。なお、S地区の調査については、調査結果を地元に還元するために、報告集会やワークショップを地元主催で行った。地元関係者たちと意見を交換しながら議論した成果は、アカデミックな知見の蓄積にとどまらず、今後どのようなコミュニティーを住民が主体となって創造していくのかに役立つものになるだろう。

現在までの達成度 (段落)

29年度が最終年度であるため、記入しない。

今後の研究の推進方策

29年度が最終年度であるため、記入しない。

研究成果

• [雑誌論文] 2016年住吉地区暮らしのアンケート調査報告書 (2018)
  • 著者名/発表者名: 野口道彦
  • 雑誌名: 人権問題研究 巻: 別冊 ページ: 1-222
• [雑誌論文] 大阪市内同和地区における人びとの移動と階層変動 (2018)
  • 著者名/発表者名: 島和博
  • 雑誌名: 人権問題研究 巻: 16 ページ: 印刷中
• [雑誌論文] 部落差別解消推進法『第6条 部落差別の実態に係る調査』を通じて、何をどのように明らかにできるのか (2018)
  • 著者名/発表者名: 齋藤直子
  • 雑誌名: 部落解放と大学教育 巻: 31 ページ: 18-25
• [雑誌論文] 生活保護世帯の子どもの大学等進学を考える (2018)
  • 著者名/発表者名: 桜井啓太
  • 雑誌名: 賃金と社会保障 巻: 1697・1698 ページ: 36-44
• [雑誌論文] 2018年度からの生活保護基準見直しー子どものいる世帯への影響を中心に (2018)
  • 著者名/発表者名: 桜井啓太
  • 雑誌名: 賃金と社会保障 巻: 1700 ページ: 26-36
• [雑誌論文] 被差別部落の母子家庭支援は、なにとつながり、なにとつながって いないのか (2017)
  • 著者名/発表者名: 熊本理抄
  • 雑誌名: 部落解放研究 巻: 207 ページ: 60-83
• [雑誌論文] インターネットと部落差別―『全国部落調査』事件が提起すること (2017)
  • 著者名/発表者名: 阿久澤麻理子
  • 雑誌名: 部落解放 巻: 746 ページ: 79-87
• [雑誌論文] 部落青年の恋愛と結婚、家族形成 (2017)
  • 著者名/発表者名: 齋藤直子
  • 雑誌名: 部落解放と大学教育 巻: 30 ページ: 18-40
• [雑誌論文] 部落差別の解消の推進に関する法律の施行と今後の課題 (2017)
  • 著者名/発表者名: 齋藤直子
  • 雑誌名: 共生社会研究 巻: 12 ページ: 33-40
  • 査読あり
• [雑誌論文] 労働の拒否という思想 (2017)
  • 著者名/発表者名: 櫻田和也
  • 雑誌名: 季刊フォーラム『教育と文化』 巻: 2017年10月 ページ: 58-62
• [雑誌論文] 生活保護世帯の大学生の現状と課題─堺市生活保護世帯の大学生等実態調査から─ (2017)
  • 著者名/発表者名: 桜井啓太・鷲見佳宏・堀毛忠弘
  • 雑誌名: 貧困研究 巻: 19 ページ: 36-44
• [学会発表] 監獄情報グループにおける下層プロレタリア問題 (2018)
  • 著者名/発表者名: 櫻田和也
  • 学会等名: 京都大学人文科学研究所フーコー研究班2017年度第4回例会
• [学会発表] 生活保護と大学進学：生活保護世帯の大学生等生活実態調査（堺市）から (2018)
  • 著者名/発表者名: 桜井啓太・鷲見佳宏・堀毛忠弘
  • 学会等名: 貧困研究会第10回研究大会
• [学会発表] 変容する差別・排除―市民意識調査を通してみた部落差別若者世代の教育を考えるために― (2017)
  • 著者名/発表者名: 阿久澤麻理子
  • 学会等名: 日本人権教育研究学会第18回（平成29年度）研究大会 (姫路大学）
• [学会発表] 地対財特法後の都市部落と『周縁化』に抗する取り組み (2017)
  • 著者名/発表者名: 阿久澤麻理子
  • 学会等名: 日本社会教育学会第64回研究大会（埼玉大学）
• [学会発表] 部落差別の現代的位相を問う―各地の人権意識調査の結果にみる市民の部落問題認識・意識の変化 (2017)
  • 著者名/発表者名: 阿久澤麻理子
  • 学会等名: 日本社会教育学会第64回研究大会（埼玉大学）
• [学会発表] La Discriminacio;n Matrimonial hacia la Minoria Buraku (2017)
  • 著者名/発表者名: Naoko Saito
  • 学会等名: Seminor “Inequalities and Families”, the Research Committee on Family Research of International Sociological Association, 29,November 2017, National Autonomous University of Mexico.
  • 国際学会
• [学会発表] 戦後日本の相対的過剰人口――高度成長期以降の不安定就業論を再考する」 (2017)
  • 著者名/発表者名: 櫻田和也
  • 学会等名: 政治経済学・経済史学会2017年度秋季学術大会
• [図書] 「ネオリベラリズム、リバタリアニズムと結婚差別、地縁忌避」(世界人権問題研究センタ-編『問いとしての部落問題研究----近現代日本の忌避・排除・包摂』） (2018)
  • 著者名/発表者名: 野口道彦
  • 総ページ数: 295
  • 出版者: 世界人権問題研究センタ-
  • ISBN: 978-4-906850-11-2
• [図書] 「結婚差別問題と家族」（松木洋人・永田夏来 編『入門 家族社会学』） (2017)
  • 著者名/発表者名: 齋藤直子
  • 総ページ数: 240
  • 出版者: 新泉社
  • ISBN: ISBN978-4-7877-1704-7
• [図書] 「部落問題のいま」(部落解放・人権研究所編『被差別マイノリティのいま』) (2017)
  • 著者名/発表者名: 内田龍史・妻木進吾・齋藤直子
  • 総ページ数: 341
  • 出版者: 解放出版社
  • ISBN: ISBN 9784759267815C0036
• [図書] 結婚差別の社会学 (2017)
  • 著者名/発表者名: 齋藤直子
  • 総ページ数: 283
  • 出版者: 勁草書房
  • ISBN: 978-4-326-65408-6