研究課題/領域番号 |
15H03413
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
寺田 良一 明治大学, 文学部, 専任教授 (00163923)
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研究分担者 |
堀田 恭子 立正大学, 文学部, 准教授 (20325674)
原口 弥生 茨城大学, 人文学部, 講師 (20375356)
野澤 淳史 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特別研究員 (30758503)
平岡 義和 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (40181143)
堀畑 まなみ 桜美林大学, 総合科学系, 教授 (40348488)
藤川 賢 明治学院大学, 社会学部, 教授 (80308072)
湯浅 陽一 関東学院大学, 社会学部, 教授 (80382571)
宇田 和子 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (90733551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境社会学 / 環境リスク / 環境正義・公正 / 社会構築主義 |
研究実績の概要 |
定量的比較調査の詳細な分析と結果の検討 (1)環境リスク認知とフレーミングに関する質問紙調査の詳細な分析 前年度に実施した日本と台湾における質問紙調査結果について、より高度な統計分析を行う。具体的には、環境リスク類型とリスク配分の公正・不公正の認識において、日本での結果とどのような差がみられるか、職業・社会経済的階層、性別等ごとのリスク認知や市民参画志向において、普遍的な結果が出るか、社会的文化的な差異が顕著に出るか、環境リスクに関する科学的言説への信頼感、企業、行政への信頼感・不信感などの関係に差異が現れるか、といったリスク認知・不公正感などに関する比較分析を試みた。環境リスク認知や市民参画志向については、台湾においても同様の傾向が見られたが、それらと階層帰属意識や社会的信頼感との関連が比較的顕著な日本に比べ、台湾においては、政党支持と原発に関する意識以外は、顕著な関連が見られなかった。 (2)追加調査の実施と結果の比較検討 日本及び台湾で実施したのと同様の意識調査を、韓国で実施した。その結果、日本、台湾ともまた異なる知見が得られた。たとえば、日本では比較的一貫していた環境民主主義的意識と脱原発意識の相関が弱く、むしろ明確に意識を示す層が明瞭な脱原発意識を示すなどの両極化が見られた。詳細な比較研究は、最終年度の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究計画として、前年度に実施した日本と台湾における環境リスク意識調査の比較分析と、補足調査があげられていた。年度前半を中心に、研究分担者がそれぞれの担当分野を中心として、意識調査の比較分析結果を報告した。環境リスクの類型化などの意識の傾向としては似た傾向が読み取れたが、階層帰属意識、政党支持、社会的信頼感など、環境以外の社会学的変数との相関において、日台の間に大きな差異が観察された。前年度に実施した台湾での聞き取り調査と合わせて、台湾の環境運動形成や原発問題と政党支持との特異な関係性などから、ある程度日台の際は予想されたが、同時に、日台の比較からでは結論がつけにくい点もいくつか浮かび上がった。 したがって、当該年度は、当初は質的な補足調査を主として考えていたが、問題状況の近似した韓国での定量的意識調査を補足調査として実施することにした。結果は現在分析が進行中であるが、政治意識や社会的信頼感との、日台とはまた異なる関係性を示唆する結果を得て、有意味な分析が期待できるデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)質問紙調査の総括 とりわけ以下に焦点を絞り、前年度までに実施した定量的比較調査の分析結果を総括する。 ・類似の環境リスク群の中でも、当該社会においてより重大視されたり、逆に軽視されたりする場合があれば、その社会的、政治的、文化的な背景の差異はどこにあると考えられるか。 ・当初は「個人レベル」の問題であった環境リスクが、社会的公正規範、市民参画志向、手続き的民主主義や透明性の志向により、社会問題として成功裏に問題構築されたとしたら、その社会的要因は何か。 (2)事例研究の総括と追加調査の実施―前年度までに実施した事例研究を総括し、調査実施以後も事態の推移が著しい事例や、とりわけ海外の事例などで聞き取り調査や資料収集が十分行えていない場合などについては、補足調査や追加的資料収集を行う。
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