研究課題/領域番号 |
15H03420
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
古川 彰 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90199422)
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研究分担者 |
鎌谷 かおる 総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (20532899)
林 梅 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (20626486)
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
坂部 晶子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (60433372)
嘉田 由紀子 びわこ成蹊スポーツ大学, スポーツ学部, 学長 (70231256)
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70434909)
鳥越 皓之 大手前大学, 総合文化学部, 教授 (80097873)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生活環境主義 / リスク対応史 / 災害文化 / 小さな共同体 / 村の日記 |
研究実績の概要 |
現代社会はさまざまな種類のリスクにあふれている。それは地球規模のものから身体の安全にかかわるものまで、多くの社会的次元に及んでいる。これらのリスクは社会や個人によってなんらかの対処がなされる。本研究が着目するのは、「小さな共同体」がリスクに対処する潜在的な力である。代表者らは1980年代前半の琵琶湖周辺の環境社会学的調査のなかで、総合開発や農村近代化の変動過程における「小さな共同体」の環境保全力を明らかにし、「生活環境主義」を提唱した。しかし、生活環境主義については、その後の展開のなかで、地球規模あるいは国民社会レベルの構造的危機に対しては対応ができず現状追認の保守主義に陥るといった批判が生まれてきた。本研究は、生活環境主義を創設した研究者が、新しい世代の研究者と協同して、琵琶湖畔の「小さな共同体」をフィールドに、新しい時代に対応した「生活環境主義」を確立することを目的としている。 そのため初年度は研究代表者・分担者は研究会を実施して、滋賀県湖西地方知内むらのこれまでの共同調査データ(以下、知内データ)に基づいて問題意識を共有することに努めた。知内むらについては、270年分の「村の日記」のうち、約70年分のデータベース化と解読・解題を完了し、その中から水害や紛争、戦争などの危機対応についての基礎データを整理しその情報を共有しつつある。この歴史的データから現時点で存続・作用しているリスク対応力の実態についての検討を開始した。こうしたフィールドデータの検討以外に、共通の枠組づくりのための基礎作業として、これまで研究されてきた村落共同体が主導する災害などのリスク対処にかかわる研究レビューを行い、文献リストの整理とそのデータベース化に着手した。また分担者は知内データとの対照に考慮しながら、それぞれのフィールドにおいて調査を実施した。それらのアウトプットは13.研究発表欄に記した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者・分担者は長期にわたって共通のフィールドにおいて共同研究をおこなってきたため、研究目的・方法については十分に共有している。したがって、初年度ではあったが、文献リストの作成および整理とデータベース化に着手し、研究会を実施するなど順調に研究を開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画では、初年度に、本研究の問題意識と方法論共有のために、琵琶湖湖西の知内地区における集約的な共同調査を実施する予定であったが、ネパールに出張中の代表者が大地震に遭遇するなどして帰国後も共同での調査日程を合わすことができず、共同調査に至らなかった。そのため次年度は、あらためて共同調査を実施するとともに、初年度に確定した枠組を修正しつつ、各研究者が担当する領域・テーマに関する個別調査を進展させる。最終年度の予定は変更なく、個別調査によって得られた知見を集約し、海外の「小さな共同体」のリスク対応力を比較参照のために整理した上で、研究成果をとりまとめるためのセミナーを開催し、一部を公開して行政、NPO、研究者および一般市民に成果を還元することとしたい。
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