研究課題/領域番号 |
15H03426
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小澤 温 筑波大学, 人間系, 教授 (00211821)
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研究分担者 |
森地 徹 筑波大学, 人間系, 助教 (50439022)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 意思決定支援 / 当事者参加 / 相談支援 / 成年後見 |
研究実績の概要 |
2016年度は3か年にわたって実施する研究の2年目であり、2015年における文献資料の整理をもとに、ケアマネジメントにおける意思決定支援を、ケース会議の分析、相談支援におけるケアマネジメント実践の分析、オーストラリアにおける意思決定支援者の研修の検討などを通して明らかにすることを目的とした。 2016年度に取り組んだ研究は、以下の5本である。1)当事者参画・チームアプローチ・協働に焦点をあてた意思決定支援過程に関する研究、2)相談支援専門員による知的障害者を対象とした意思決定支援についての研究、3)オーストラリアにおける意思決定支援の参加報告、4)国際育成会連盟世界会議における意思意思決定支援に関する報告、5)成年後見実施機関における市民後見人支援体制の現状分析に関する研究 1)の研究課題では、ケース会議に障害当事者が参加することによってどのような変化が生じ、支援者の意思決定支援のアプローチに与える影響に関して詳細に検討をした。この研究は2017年度も継続して実施し、ケアマネジメントに与える効果に関しても検討する予定である。2)の研究では、相談支援専門員の感じる意思決定支援におけるジレンマの要因として面接調査を通して仮説的に18カテゴリーに類型化することができた。2017年度はこの18カテゴリーの検討を通して要因を整理する予定である。3)の研究では、この実践をCapabiltyとCompetenceの概念による整理枠組みを用いて、意思決定支援実践の特徴を整理した。2017年度はより詳細に整理を行い実践の理論化を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的として、自らの意思を明確に示すことが困難な障害者に対するケアマネジメントにおける意思決定支援プログラムを、事例分析および相談支援専門員(障害者ケアマネジメント従事者)への調査分析により構築することである。さらに、構築した意思決定支援プログラムを、ケアマネジメント実践に適用し、意思決定支援を組み込んだケアマネジメントプログラムを障害者のQOLへの効果の面で検討し、意思決定支援プログラムの評価を目的とする。 現時点では、事例分析と相談支援専門員に対する調査を実施し、その分析を行っている段階であり、障害当事者が参加した形でのケース会議における変化を分析し、障害者にとっての効果を検討することは2017年度の課題である。相談支援専門員に対する調査もさらに対象者を増やして、知見の一般化を目指すことを考えており、2017年度に知見を整理する予定である。障害者に対する効果に関しては、いくつかの量的な指標を用いて分析する予定であったが、意思決定支援に関わるケアマネジメントがかなり広範囲に障害者のQOLに影響を与えていることが予想されたためケース分析を中心とした質的な評価になることが考えられる。 2017年度は、この2つの調査分析とこれまで事例研究でデータを収集した事例を再分析し、障害者のQOLに与える影響とその効果に関して詳細な検討を加える予定である。海外の知見に関しては、そこで用いられている意思決定支援プログラムを整理した上で参考にしながら、日本におけるプログラムの構築の参考として用いる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は以下の4点の取り組みを中心に進めて、最終的なまとめを行う予定である。 ただし、当初、計画していた障害者に対する意思決定支援プログラム適用の前後での数量的な評価研究は評価視点の整理の困難さも予想されるため実施しない方向で質的な評価に留めることを考えている。 1)障害当事者参加型のケース会議の展開と障害者における意思決定とQOLの変化の分析(この部分が、意思決定支援プログラムの評価に該当する) 2)相談支援専門員における意思決定支援の現状とジレンマの分析の整理 3)海外(オーストラリア、英国など)の意思決定支援プログラムの内容の整理と日本への応用とそれをふまえた意思決定支援プログラムの構築 4)ストレングスモデル、個人中心計画などのケアマネジメントが用いられた事例の収集と意思決定支援に関する取組の整理、必要に応じて事例を通しての障害者のQOL変化の分析(この部分も、意思決定支援プログラムの評価に該当する)
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