研究課題/領域番号 |
15H03432
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
相川 章子 聖学院大学, 人間福祉学部, 教授 (60383303)
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研究分担者 |
荒井 浩道 駒澤大学, 文学部, 教授 (60350435)
山口 創生 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 地域・司法精神医学研究部, 室長 (20611924)
濱田 由紀 東京女子医科大学, 看護学部, 非常勤講師 (00307654)
種田 綾乃 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 社会復帰研究部, 研究員 (70643261)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ピアサポート / ピアスタッフ / ピアサポーター / 精神障害 / 縦断的研究 / リカバリー / 効果測定 / 理論構築 |
研究実績の概要 |
本研究は、ピアサポートおよびピアスタッフに関する効果測定を主とする研究班(効果測定班)と、ピアサポートの理論構築を主とする研究班(理論構築班)の2つの柱によって構成されている。二つの研究班は密接な関係性の中にあり、研究会等を実施し相互に情報を共有している。 効果測定班は首都圏および福岡県における障害福祉サービス事業所、とりわけ就労継続B型および地域活動支援センターのピアサポートおよびピアスタッフの効果について、新規利用者への質問紙調査を縦断的に実施し、その効果を測定している。理論構築班では、効果測定班の協力機関のうちピアスタッフ雇用機関に雇用されているピアスタッフへのグループインタビューを首都圏、福岡県それぞれで実施し、質的分析を行っている。また、ピアスタッフへのシャドウイングフィールド調査を実施し、ピアスタッフと利用者のかかわり、他職員とのかかわり、具体的な業務内容等の調査を実施した。 これまでの結果として、効果測定班ではベースライン調査における分析結果として、ピアスタッフと職場環境の関係性について示唆を得ており、ピアスタッフを雇用することで他のスタッフは職務への達成感や自身の支援に効力感を感じるという効果を得た一方で、ピアスタッフを雇用することによって組織の意思決定に寄与している感覚が低下することや、情報が入りにくくなることなどが明らかになるという結果が得られた。理論構築班によるグループインタビュー調査の一部の分析結果、114のコード、26のサブカテゴリー、8のカテゴリーが生成され、そのなかで自ら経験しているからこそ利用者との辛い体験を共有することや気持ちに深く共感することがピアスタッフの特徴として得られた。 今年度は最終年度として効果測定班の縦断的調査の結果が明らかになるとともに、理論構築班における分析結果と合わせて、ピアサポートの理論構築を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効果測定班については初年度に協力機関を確定し、2年目(2016年度)より調査が開始される準備を整えた。依頼時には暴露群18,非暴露群33機関より協力承諾を得られたものの、実際のベースラインのデータ数から収集率が低く、その後のドロップなどを考慮すると耐えうるデータ数が確保できるか危ぶまれたため、ベースライン収集期間を半年間延長した。その後、ドロップアウトはあるものの、得られたデータから分析実施し最終年度に備える。 また理論構築班については、これまでの知見を再確認、共有し、本研究班として検討すべき未解明な部分と、その理論構築に向けた研究デザインおよび方法の検討を行うことができ、2016年度にはグループインタビューおよびフィールド調査を実施した。研究代表者が半年間特別研究期間で日本不在となったこと、その後家庭の事情もあり研究専念時間が少なくなったことなどにより、分析作業が遅々としたため、理論構築への議論の深まりに遅れがでている。今後、最終年度としてピアサポートの理論構築を効果測定班の結果と合わせて検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は研究の最終年度を迎える。 効果測定班においては、2016年4月に機関調査、スタッフ調査、ピアスタッフ調査を実施、2016年4月から2017年9月をリクルート期間として新規利用者調査を実施しており、さらに9ヶ月後、18ヶ月後の追跡調査を実施している。これらは基礎的なデータとともにリカバリーへの理解度、ピアスタッフの組織内の統合度などに関する調査を実施している。ベースライン調査についてはそれぞれ結果をまとめている(研究実績の概要参照)。 理論構築班においては、2016年度前半で福岡および首都圏におけるフィールド調査や個別インタビューおよびピアスタッフ等フォーカスグループインタビュー調査を実施し、それらの質的データをもとに検討、分析を行った。その結果についてはすでに学会発表を行い公表しているが、論文として現在まとめているところである。(研究実績の概要参照) 今年度は効果測定班は縦断的調査の結果が得られる。これまでのベースライン調査の結果からも、現在の日本のピアスタッフを取り巻く状況、職場環境等による影響があらわれていることは予想され、ピアサポートおよびピアスタッフの効果として示される結果に着目したい。 理論構築班は、ピアスタッフへのグループインタビューデータの分析をさらに精査し、ピアスタッフから見えるピアサポートの効果についてまとめる。さらに、利用者および職員にとってのピアサポートの効果についてフィールド調査を行い、効果測定班の結果とあわせて、日本のピアサポートおよびピアスタッフを取り巻く状況を合わせた理論構築を試みる。 ピアサポートおよびピアスタッフのこれまでの歴史的マスターナラティブとして、制度的背景、支援理念的背景、社会文化的背景等を踏まえた現状整理を行うとともに、先行事例としての欧米諸国との比較検討を行い、日本のピアサポートおよびピアスタッフの取り巻く現状を捉える。
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