研究課題/領域番号 |
15H03439
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
上野谷 加代子 同志社大学, 社会学部, 教授 (40123583)
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研究分担者 |
山井 弥生 (斉藤弥生) 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (40263347)
所 めぐみ 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (00411281)
石黒 暢 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (20273740)
野村 裕美 同志社大学, 社会学部, 准教授 (90411058)
羅 みんきょん 佐賀女子短期大学, その他部局等, 准教授 (50758315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソーシャルワーク / 地域福祉 / 権利擁護 / 参加と協働 / ビネット調査 / 支援困難事例 / 実践理論 / アクションリサーチ |
研究実績の概要 |
主な実績の概要は、1)概念の検討、2)調査を踏まえた定例研究会の実施、3)論文・学会発表・図書の業績である。概念の検討として、Victor Pestoff氏およびJohan Vamstad氏を招き公開セミナーを実施した。Co-Production概念、それを用いたスウェーデンの保育所の親の参加の事例に対し、セミナー参加者の活発な議論が交わされ、研究の視点がより明確となった。今年度の定例研究会は、7回実施した。主な内容は、各研究分担者の国内外の調査報告に対し、ソーシャルワークが今日的な諸課題の解決にどのように貢献し、社会変革をしていくかという視点から議論し、ソーシャルワークの実践理論を模索した。業績は論文9本、国内外学会発表12本、図書2本である。国内の調査は、滋賀の縁創造実践センターの公益的な活動に向けた協働の成立要因を明らかにし、学術雑誌にて公表した。さらに『滋賀県地域包括支援センター機能強化支援事業~平成27年度滋賀県委託実態調査報告書~』を行った。また、社会福祉協議会等の支援組織における多職種協働に関する論文執筆を行った。他にも、南医療生協の取り組みを事例として、社会サービスの「共同生産」パートナーとしての市民に関する学会発表を行った。海外調査は、スウェーデンの高齢者環境に関する図書の執筆に加え、地方都市および過疎地域における地域包括ケアの仕組みづくりを北欧モデルとの対比した学会発表、Pestoff氏や Vamstad氏らとの共同発表も複数回行っている。また、イギリス調査では、英国で出版されている関係書籍の分析からテキストブックにみるソーシャルワーク実践とコミュニティについて発表した。韓国調査では、地域を基盤とした支援困難事例への対応の特徴と課題について、学会発表・論文執筆を行っている。また、デンマークのコレクティブハウジングに関する論文も執筆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は「地域福祉視点によるソーシャルワーク実践理論」を開発し、その理論に基づくソーシャルワークの実践方法を提示することである。そのために、地域における実践の調査研究(「参加と協働」によって生活課題の解決を目指す、国内2実践(滋賀・堺)と海外(英・瑞・韓)の実践)の分析を、実践理論の構築に不可欠な視点を提供する2つの重要な理論(L.Dominelli氏およびV. Pestoff氏の概念)より探る。 研究目的に対する主な進捗状況は次のとおりである。まず、Pestoff氏らを同志社大学に招き、公開セミナーを行い、約35名の参加を得た。そして、研究視点となるCo-Production概念をより深く探るため、 Pestoff氏本人や研究会以外の社会福祉研究者らと活発な意見を交わした。さらに、イギリスにおいて、研究分担者である所めぐみ氏とDominelli氏は概念やイギリスの昨今の現状に関する意見交換を行っている。 地域における実践の調査研究として、国内では、滋賀の縁創造実践センターの理事会への参加、また圏域毎の横断的な専門職への研修を通し、アクションリサーチを行っている。さらに、正副代表理事4名に対して質的調査を行い、公益的な活動に向けた協働の成立要因を明らかにし、学術雑誌等で公表した。堺市社会福祉協議会には、研修会の講師という立場で実践に関与しアクションリサーチを行っている。また海外調査は、スウェーデン、ドイツ、イギリス、韓国の社会福祉専門職に対して調査を行った。ドイツ調査では、事例活用調査(ビネット調査)を行い、福祉ガバナンスの国際比較をさらに進める(2016年度「日本地域福祉学会」で発表予定)とともに、イギリス、韓国調査では、支援困難事例や組織間連携等、新たな諸制度とその影響に関する質的調査を行い、次年度以降の事例活用調査を行うための基礎調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、国内の2実践(滋賀の縁創造実践センター、堺市権利擁護サポートセンター)を新たな地域福祉型ソーシャルワークのモデルとして捉え、当該ソーシャルワーク実践の福祉社会形成に資する社会的意義、具体的方法論を明らかにする。そのために、事例を活用したインタビュー法を用いて、国内(先述)・国外(英・瑞・韓)を調査し、各国における地域福祉への住民の参加、福祉サービス生産への住民や関係機関・団体等の関わりを、Co-Production概念等を用いて整理し明らかにする。それらを総合的に考察し、当事者と地域住民の「参加と協働」を引き出すソーシャルワーク機能と社会的効果を明らかにし、ソーシャルワーク実践理論を提示する。 ソーシャルワーク実践理論形成のためには、ソーシャルワーク展開にみられるミクロ・メゾ・マクロを連続的に捉え、公的セクター間、専門職間、当事者および地域住民の協働を統合するためのアセスメントと介入を含む必要がある。それには、制度設計、運営、実践、効果の発揮に至るまでの一連の構造分析を必要とする。よって、本研究は1)理論研究:定例研究会を通じてソーシャルワークの実践理論の検証と新たな視点の検討、2)国内調査、3)海外調査:事例活用調査、の理論研究および調査研究とする。 2016年度は、定例研究会及びラウンドテーブルを開催し、ソーシャルワーク実践の国内外の比較検討を行う。そして、国内外調査を実施し分析評価を行う。海外調査では前年の調査を踏まえ、事例活動調査を実施し、中間まとめをおこなう。さらに米国におけるコミュニティワーク実践の実態を学ぶためにMary Ohmer氏を招き、研究会を開催する。得られた結果を基にして、事例による国際比較の理論形成および指標作りに取り組み、次年度の補足調査への準備を行う。
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