研究課題
基盤研究(B)
本研究は、人々がどのような場合に格差や不平等を生み出す現行の社会体制の変革に動機付けられるかを明らかにすることを目的としている。研究期間の4年間に大学生と社会人を対象とする複数の調査研究(国内外のWEB調査を含む)と実験的研究を実施した。その結果、既存の階層構造の変化を知覚することが、変革可能性への自信を強め、その結果、変革動機が喚起され、種々の平等化政策への賛意に結びつくことが見出され、この一連の心理過程には一定の通文化性が認められた。また、所属階層にもとづく社会的アイデンティティの様相が潜在、顕在レベルで一連の過程を促進、阻害することが示唆された。
社会心理学
これまでの社会心理学の理論や知見は、差別の解消や格差是正のための社会変革が起きる可能性について悲観的な見解が優勢であった。これに対して、本研究は、人々のなかに潜在する変革動機を呼び覚ますための手立てを示すことに一定程度成功している。従来の悲観論に一石を投じた点に学術的意義を認めることができる。また、本研究で得た知見は、平等主義政策を実現するための筋道を心理学の観点から提示していく道を拓くものであり、その社会的意義は大きいと考えている。