研究実績の概要 |
2018年度は本研究課題の最終年度として(1)関係所属の存在論的機能研究、(2)他者との良好な対人関係を築きにくい人びとにとっての関係所属の意味、(3)他者との関係と他の資源との代替可能性の3つのテーマについて主に応用的・発展的な検討を行った。 まず(1)については、死関連思考の脳情報デコーディング(柳澤,2018)ならびに東日本大震災をテーマにした検討(柳澤・他,2018)に取り組んだ。 (2)についてはDark Triad特性(DT)に着目した。この特性の高い人びとの組織適応戦略(浦, 2019)、対人関係の形成戦略(田崎・中島,2018)と社会適応戦略(増井・浦a, 2018)、高DT者がリーダーとして選ればれる過程(増井・浦b, 2018)、について検討した。浦(2019)はDark Triad特性の1つであるマキャベリアニズムは成果主義的な雇用形態の組織における対人的交渉力を媒介してキャリア上の成功をもたらす可能性を示した。増井・浦a, 2018)では、治安の悪い地域に住む女性が高DTのリーダーを求める傾向にあることが示された。また田崎・中島(2018)では、高DT者の搾取的な対人関係形成戦略を明らかにした。さらに、増井(2018)は、主観的社会経済的地位と社会的孤立がインターネット上での反社会的行為(ネット荒らし)と関連することを明らかにした。 (3)については、友人関係の形成に関わる個人特性についての多面的な検討(Shimizu, Nakashima, & Morinaga, 2019)を行った。シャイな人びとは友人数が少ないこと、ソーシャルスキルは外向的な行動を媒介して友人数の増大に寄与すること、自尊心は関係継続の高さと関連することが示された。また、防衛的悲観主義は他人の反応を考慮し尊重する努力を導くものの、そのことが却って自身を疲れさせる可能性が示された。
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