研究実績の概要 |
「メタ認知トレーニングMetacognitive Training(MCT)」は、妄想をもつ統合失調症患者に特徴的な認知バイアスに対する心理学的介入法である。研究代表者らは日本語版MCT(MCT-J)を開発し、わが国の精神科医療における利用可能性を確認した。本研究では、MCT-Jの臨床有用性をランダム化比較試験によって明らかにする。また、MCT-J実施前・中・後で陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、機能の全体的評定(GAF)、サイコーシスの認知バイアス質問紙(CBQp)、ベック認知的病識尺度(BCIS-J)、精神障害者の地域生活に対する自己効力感尺度(SECL)、不適応/適応的コーピング尺度(MAX)、生活の質尺度(EQ-5D)、ベック抑うつ尺度(BDI-Ⅱ)、Rosenberg自尊心尺度(RSES)を用いて心理学的変化を調べ、妄想を軽減させる心理学的メカニズムについて検討する。 昨年度は次の事項を達成することができた。(1)北海道、東京都、長野県、佐賀県、宮崎県、長崎県から7名の研究協力者(協力施設・機関は8施設)を得て、MCT-J実践者のトレーニングを行うことができた。(2)科研費の支援を得て、MCT-Jの評価尺度として有効だと考えられる「サイコーシスの認知バイアス質問紙(CBQp)」と「不適応/適応的コーピング尺度(MAX)」の日本語版を作成することができた。前者に関する研究論文はCognitive Therapy and Research誌に掲載されている(Ishikawa R, Ishigaki T, Kikuchi A, et al.(2017))。(3)本研究にも重要な資料となる「うつ病のためのメタ認知トレーニング(D-MCT)」日本語版の翻訳に、科研費の支援により着手できた。(4)本研究の計画書を研究代表者が所属する機関の倫理審査委員会に提出し、承認を得た。
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