研究課題/領域番号 |
15H03457
|
研究機関 | 埼玉学園大学 |
研究代表者 |
羽鳥 健司 埼玉学園大学, 人間学部, 准教授 (10458698)
|
研究分担者 |
小玉 正博 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (00114075)
石村 郁夫 東京成徳大学, その他部局等, 准教授 (60551679)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ポジティブ心理学 / オンライン / アプリケーション / 強み / 肯定的心理資源 / 予防 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、オンラインツールを援用したポジティブ心理学的介入プログラムを開発し、プログラムが個人の肯定的心理資源の構築に及ぼす影響、および個人の抑うつ症状の予防効果を検討することであった。この目的の達成を目指して、本年度は以下の2つの目標を立てた。第一に、既存のポジティブ心理学的介入法を概観すること、および肯定的心理資源の評価尺度を作成または決定することであった。第二に、正規のオンラインプログラムを開発する予備段階として、オンラインツールを用いた肯定的心理資源を育成する短期的介入プログラムを作成し、その介入効果を検討することであった。 現段階での研究実績の概要としては、第一の目標については概ね達成された。具体的には、ポジティブ心理学的介入に関する概観論文を2本投稿し、掲載が決定された。また、参考とする介入プログラムに関しては、米国陸軍兵士のレジリエンス向上を目的としたCSF(Seligman, 2011a, 2011b)や、オーストラリアの小中高一貫教育校の5年生から12年生までを対象としたポジティブ教育プログラム(Seligman, et al., 2009)、また我が国の大学4年の就活生を対象としたレジリエンス教育プログラム(Kodama, et al., 2011)の資料を入手し検討した。評価尺度については、分担者との討議を経て、適切な測定尺度の選定および作成に着手している。第二の目標については、やや遅れている。しかしながら、すでにアプリケーションの作成やネット環境の構築に精通している専門家とコンタクトを取っており、実際の予備的オンライン介入プログラムの内容を決定し、アプリケーションの作成を開始しているが、作成者に帰属する権利の範囲について確認中であるため、プログラム運用およびデータの収集と分析までには至ってない状況である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度の当初の計画では、主に抑うつの予防に関するポジティブ心理学的介入法の概観および評価尺度の作成または選定、および予備的介入プログラムの作成と実施であった。この2つの目標のうち、前者については、おおむね順調に進展した。具体的には、関連した先行研究において開発された各プログラムの検討、および本プログラムに関係が深いと考えられるポジティブ心理学的概念や介入法の概観論文を執筆した。さらに、米国フロリダ州で開催された第4回国際ポジティブ心理学会に参加し、最新のポジティブ心理学的介入プログラムの知見を得、研究者間で交流を行った。 第二の目標である短期的プログラムの開発および運用では、やや遅れが生じた。具体的には、以下の二点において解決するべき問題が発生した。第一に、プログラムの内容設定の問題である。すなわち、(A)従来の対面方式を併用したプログラムにするのか、(B)オンラインのみのプログラムにするのかによって、アプリケーションの内容を変更する必要があった。当初はB案に沿って検討を進めていたが、被介入者への心理教育の効果およびプログラムの持続効果を勘案した結果、A案に変更することにしたため、アプリケーションの内容を大幅に変更する必要に迫られ、その結果開発が送れた。第二に、アプリケーションの作成自体について、依頼する業者の選定および帰属する権利の範囲の確認に時間がかかり、開発の着手が遅れた。しかしながら、第一点目についてはすでに解決済みであり、二点目についても解決のみ通りが立っており、介入のフィールドも確保済みである。 以上より、全体としては、「やや遅れている」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の方向性としては、大きな変更点はない。ただし、プログラムの内容変更や権利の確認の必要性に時間がかかり、当初の計画よりもやや遅れを生じている。 平成28年度は、平成27年度に遂行する予定であった研究のうち、未遂行の研究を早期に実施する。具体的には、短期間の予備介入プログラムの効果を検討することである。このプログラムの内容はすでに決定されており、対象者も確保済みであるため、速やかに実施して分析し、成果を発表する。作成したプログラムは無料で利用できる形として公表する予定である。 平成28年度に新たに実施する研究は、前半で作成・実施した短期プログラムや平成27年度に収集・検討した欧米を中心に開発されている肯定的心理資源育成プログラムや強みの開発プログラムを参考にして、5セッション程度構成されるオンライン援用型のポジティブ心理学的介入プログラムを作成し、試験的な運用を行う。このプログラムの方向性は、個人の肯定的心理資源を構築を目指すものとする。介入計画は、研究分担者や研究協力者の所属する複数施設で実施することとする。プログラムの評価方法は、日本版BDI、抑うつスキーマ尺度、自尊感情尺度、健康行動や気分の変動等を測定できる尺度を用いる予定である。介入時期は、平成28年10月から12月にかけて実施し、同意が得られた者に対してのみ平成29年1月から3月にかけて追跡調査を行う予定である。
|