研究課題/領域番号 |
15H03458
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
山田 冨美雄 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 教授 (50183687)
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研究分担者 |
島井 哲志 日本赤十字豊田看護大学, 看護学部, 教授 (30136973)
大野 太郎 大阪人間科学大学, 人間科学部, 教授 (40368410)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PTG尺度 / 外傷後成長質問紙 / PTG尺度の標準化 / 被災体験とPTG / 主観的幸福感 / レジリエンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1995年に発生した阪神淡路大震災時に小中学生であった人達を対象として、20年後の現在、外傷後成長(posttraumatic growth)と呼ばれる心身状態にあるかどうかを調査し、災害後の体験などがどのようにPTG成立に関わるかを検討することであった。平成27年度はPTGの尺度の標準化をおこない、当時小中学生であった年齢層(現在27~40歳)の2055名(男994名、女1061名)を対象としてWeb調査を実施し、PTG尺度の標準値を求め、因子構造を確認した。 その結果、21項目からなるPTG尺度は1因子構造を示した。そこで合計得点を算出して標準値を求めたところ平均値±SDは47.3±24.5であった。PTG得点は21点(最小値)から126点(最大値)まで広く分布し、歪度.935、尖度.265であった。男女別平均±SEは、男性で49.1±1.681、女性で51.4±2.46で性差は有意ではなかった。 阪神淡路大震災で直接被災者302人、被災なし1713名、記憶なし40名別の平均PTG得点を男女別に比較したところ、性(2)×被災体験(3)の交互作用に有意傾向がみられた(F(2,2049)=2.684, p<.10)。被災群の平均PTG得点では女性が男性より高く、記憶なし群のPTG得点では男性が女性より高かった。また被災有り群は被災なし群よりPTG得点は高かった。PTG得点と主観的幸福感(r=.183)、レジリエンス得点(r=.134)との間に有意な正の相関が認められた。主観的幸福感とレジリエンス得点との間には比較的強い正の相関が認められた(r=.553)。 以上の結果に基づいて、PTG尺度21項目の標準化第一段階を終え、男女別、被災体験の有無や程度別の標準値を求め、個々の対象者のPTG得点を評価する基盤となったと結論づける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定ではまず阪神淡路大震災発生時に我々がストレスマネジメント教育を実施した西宮市の小中学生を対象としてインタビューを行い、PTG尺度を作成することを予定していた。ところが既に宅香菜子氏により21項目からなるPTG尺度の日本語版が開発されており、その使用許可が得られたので、まず多くの集団を対象とした21項目からなるPTG尺度の標準化を行った後に被災地に住む対象者集団への面接を試みることと改めた。Web調査により震災当時小・中学生各学年60名以上の計2055名を対象とした調査が実施でき、その標準値を得ると共に因子構造を確認し、妥当性の検討もおこなうことができた。次年度以降、これらの資料を基礎として、震災体験者のインタビューからPTG成立の用件を調査する準備が完了したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、PTG尺度の標準化資料を基として、西宮市内の対象者ならびに他地域で震災体験者のインタビューを行い、PTG成立の用件を調査する。
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