研究課題/領域番号 |
15H03461
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
本吉 勇 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (60447034)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 認知 / 統計量 / 意思決定 / 視覚 |
研究実績の概要 |
時間統計量の推定メカニズムについて心理物理学的解析を進め主に以下のことを明らかにした.(1) 方位や運動など単純な視覚特徴の時間平均を判断するとき,観察者は刺激末尾の情報を重点的に用いる(新近効果).(2) 判断に利用する時間範囲は変動(分散)が大きいほど短い.(3) 方位の判断では常に刺激末尾の数百ミリ秒の情報が重視され,運動の判断では最初の約1秒以降の情報がモニタされる.(4) 変動が比較的遅い時間帯の情報が重視される.(5) 刺激観察中に反応する場合,反応直前の300ミリ秒近傍の情報を重視する.(5)刺激が文字の場合,新近効果は消失する.これらの成果の一部は国際会議に投稿・採択され発表した.その後,いわゆる視覚的な「数覚」の根拠の一つとして注目されているドット列の時間平均の推定においても同様に親近効果が欠如しているのかという問題を検討するため,新たな心理物理学実験を開始した. 空間統計量の知覚について,不注意が空間的な全体運動の知覚を逆説的に促進することを示す研究成果,および視覚探索における座標系の役割に関する研究成果をそれぞれ原著論文にまとめ国際誌に公刊した.また,短時間提示されるテクスチャ刺激の平均方位の判断は観察時間が長くなるほど難しくなるという予想外の現象を発見し分析したが,不安定なものだった.一方,動的なテクスチャ刺激の空間平均の判断では数秒以上にわたり観察時間に比例して成績が向上することを見出した.この時間加算効果は知覚系の時間統合のレンジを明らかに超えており,時空間統計量の推定が非常に長い時間にわたり情報を統合する機構に基づくことを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間統計量の知覚については,申請時の前期二年間の研究計画において予定していた心理物理学実験と分析をおおむね完了し,一部の成果は国際会議に採択されるに至った.また重要なことに,今後の研究の展開に必要とされる基礎的な実験プラットフォーム(実験ブース,装置制御系,プログラム・リソース,観察者リクルート体制などを含む)を構築することができた.申請時の三年目の計画に記載していた「予期」に関する実験についてもパイロット実験を着々と進めている.脳波計測などを含めた生理学実験については,心理物理学実験と同時並行に脳波をモニタする簡易システムの構築をほぼ完了した. 空間統計量の知覚については,申請前にデータを集めていた全体運動や視覚探索に関する研究成果を国際誌に公刊した.また,テクスチャの平均方位知覚における新現象を発見した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた時間平均知覚に関するいくつかの実験結果を複数の原著論文にまとめ,それぞれ国際誌に投稿する予定である.また,適切な計画のもと「予期」に関わる認知メカニズムの解明に向けた本実験を進める.さらに,これまでの結果から新たに着想したいくつかの心理物理学的研究を展開する.また,心理物理学実験と同時並行に脳波をモニタするシステムを共有施設である多チャンネル脳波計と組みあわせ,生理学的機構の検討を開始する.
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