研究課題/領域番号 |
15H03462
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
石口 彰 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10184508)
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研究分担者 |
薬師神 玲子 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (30302441)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 実験心理学 / 分散識別 |
研究実績の概要 |
【研究計画1 バラツキ認知の共通メカニズムの実験的検討】1)クロスモダリティ バラツキ認知における多感覚情報の利用について、共感覚との関連も含めて検討を進めた。その結果、共感覚的関係を持つ刺激(サイズとピッチ)が分散知覚のサンプリング過程で同一尺度上に乗る可能性が示された。2)クロス属性 視覚属性間でバラツキ認知の対応が可能かという問題を、調整法を用いて検討した。その結果、方位のバラツキとサイズのバラツキ認知に系統的な対応関係が示され、共通のメカニズムを媒介とする可能性が示唆された。3)学習転移 異なる属性(線分の長さと傾き)において,バラツキ認知の共通メカニズムが存在するか否かを、学習転移の手法を用いて検討した。その結果、学習段階において学習が生じたとは言えず、また,post-testにおけるパフォーマンスの変化には,学習との関連性は認められなかった。異なる属性間におけるばらつき認知の転移が生じたとは判断し難い。 【研究計画2 分散認知の共通メカニズムモデルの検証】1)平均値推定との関連性 対象刺激群の平均値の違いは、それらのバラツキの識別にどのような影響を及ぼすかを理想的観察者モデルを用いて検討した。その結果、平均値が等しいときに、①バラツキ識別の精度が僅かに高いこと、②バラツキ認知過程には、平均値推定は含まれないこと、が示唆され、平均値推定を組み込んだモデルでは説明できないことが示された。 【計画外の成果】 高次過程におけるバラツキ認知 社会性を持つ高次刺激の分散知覚について検討を行うため、顔の表情(happy, sad, surprise)の分散知覚の日中比較を行った。結果、表情知覚について共通性の高い日中間で文化差はみられなかった。しかし、両者の結果を統合して分析したところ、顔の局所的な特徴のみより、顔全体が提示された時の方が、分散知覚精度が高いことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の当初の計画はおおむね実施され、成果も得られた。さらに、計画外では、高次過程の顔表情のバラツキ認知の研究にも着手し、日中比較も行ったことは、評価できると考えられる。しかしながら、バラツキ認知の共通メカニズムを検討する手法の一つと考えた学習転移に関して、必ずしも肯定的な結果が得られなかったので、その分、マイナスと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトは平成30年度で終了するが、今後は、テーマを広げ、量的多様性認知の検討に着手するつもりである。
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