研究課題
目的 奥行き方向に 2 列の光点を配列して,それらが互いに平行に見えるようにする実験のことを並木実験とよぶ.平行な並木をつくるとき,光点列が正中面に 関して対称になり,しかも1)光点列の間の幅の大きさが等しく見えるようにする等距離教示と,2)光点列が前後 に延長されたと想定したときに遠くで交わって見えないようにする非交差教示がよく用いられてきた.本研究では,従来の2方法に加えて直交並木と呼ばれるべき別の方法を用い,また実験にかかる時間を短縮するために光点列に代えて長い竿を用い,視空間の平行性を通してその幾何学を再考した.装置は遠端が固定された2竿が用いられた.観察者は,各竿の近端を片手で握って,その間隔を調整した.観察者の目から竿の遠端までの距離は242.7cm,近端までの距離は 27.7cm.竿の遠端の間隔は,正中面を中点にして16cm,38cmあるいは70cm.観察者の頭は,竿の置かれた面あるいはそれよりも10cm高い位置に固定された.観察者は,竿の近端の間隔を調整して,3 種の平行竿を形成した.非交差課題:2本の竿が正中面に関して対称に見え,その竿を前あるいは後ろに伸長しても遠くで交わって見えないようにする.等距離課題:2本の竿が正中面に関して対称に見え,竿の間の間隔が,どこでも等しく見えるようにする.直交課題:各竿が,観察者の両眼を通る前額面に直交して見えるようにする.24人の観察者を用いた.各観察者は3課題のすべてを行った.各課題において観察者の目の高さと竿の遠端間隔との組み合せからなる6条件のそれぞれに対して,遠隔調整と近接調整が各2回行われた.実験は明室.実験の結果,課題に関連する効果が有意でなかったことより,3種の課題が知覚的に同じことを表わすと考えられる.これは視空間をユークリッド空間とみなしてよいことを意味する.
2: おおむね順調に進展している
高額な装置を必要とする複雑な実験でないために,大きな障害に遭遇することはないと考えるが,被験者を集めることがむずかしいときがある.
昨年の実験では2竿を奥行き方向に置き,その間隔がどこでも等しくなるように竿の方向を調整する等距離課題と,2竿が平行になる(すなわち,非交叉あるいは前額面に直交する)ように竿を調整する課題とを比較し,2課題の結果が実質的に異ならないことを示した.これは視空間がユークリッド空間とみなせることを示唆する.本年度の実験では,奥行きの異なる2地点において,竿の間隔が特定の比になるように竿を調整する間隔課題と,2竿がつくる交叉角が特定の値になるように竿を調整する角度課題を比較することによって,視空間の幾何学について再考する.
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立命館文学
巻: 646号 ページ: 43-58
Attention, Perception, & Psychophysics
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