研究課題/領域番号 |
15H03472
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松田 武雄 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90175604)
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研究分担者 |
宮崎 隆志 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10190761)
河野 明日香 名古屋大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10534026)
牧野 篤 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20252207)
上野 景三 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (30193824)
石井山 竜平 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30304702)
岩田 美香 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (30305924)
藤村 好美 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (50372694)
李 正連 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60447810)
大串 隆吉 首都大学東京, 都市教養学部, 名誉教授 (70086932)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 社会教育 / 地域福祉 / コミュニティ / 専門職 / ソーシャル・ペダゴジー |
研究実績の概要 |
1.海外の調査研究:ドイツ、アメリカ、スウェーデン、韓国における社会教育学の専門職養成課程の現状について調査した。ドイツでは、5大学の専門職養成課程について調査した。アメリカでは、Social Pedagogyという学問領域はないと考えられていたが、唯一、アリゾナ州立大学にSocial Pedagogyの修士課程が設置されていることを発見し、訪問調査を実施した。スウェーデンでは、トッラレ民衆大学における専門職養成課程について調査した。韓国では平生教育士(生涯教育士)を精力的に養成しており、その現状を調査した。 2.国内の調査:国内は、長野県松本市、島根県松江市、福岡県福岡市、石川県金沢市を調査した。特に松江市については、5人で調査団を組み、公民館と地区社会福祉協議会が融合した公民館・地域福祉活動を調査し、まさに社会教育福祉と呼べるような体制と具体的な活動内容について詳しく調査することができた。 3.国際会議の開催:国際会議を2回開催した。1つは、ドルトムント大学教授のウヴェ・ウーレンドルフ氏を招いて、「日独戦後社会教育史」のセミナーを名古屋大学で開催した。2回目は、スウェーデンのソッレンテューナ市個別・家族・精神障害ケア研究所長のリスベット・エリクソン氏を中心とした8名の日本調査団が来日したことを機に、東京大学でシンポジウムを開催した。 4.研究会の開催:研究会を名古屋大学で3回開催した。1回目は5月に開催し、本研究の全体計画について討議し、問題意識を共有した。2回目は、12月に開催、ドイツ、アメリカ、韓国の調査報告を聞き、質疑・検討した。3回目は、3月に行い、1日目にスウェーデン、松江市、福岡市、金沢市の調査報告を聞き、質疑・討論した。2日目は、今後の調査研究計画についてそれぞれが報告し、本研究課題のコンセプトについて議論した。調査と国際会議の報告をまとめて報告書を発行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
限られた予算の中で、ドイツ、アメリカ、スウェーデン、韓国の海外調査を行い、日本では、松江市、松本市、福岡市、金沢市の調査を行った。 海外調査では、特にドイツでは多くの大学を訪問して詳細な調査を実施し、社会教育の専門職養成課程についてかなり明らかにすることができた。また、従来、Social Pedagogyはヨーロッパ固有の概念であると私たちは理解してきたが、アメリカのアリゾナ州立大学にSocial Pedagogyの修士課程が設置されていることを発見し、訪問調査を実施したことは、大きな意義のあることであった。しかし、ヨーロッパからその理論を学びながら、いまだ模索段階にあることがわかり、引き続き調査していく必要がある。 国内調査では、4つの自治体を調査し、特に松江市の調査では、公民館と地区社会福祉協議会が融合した社会教育福祉活動について具体的に聞き取りをすることができ、本研究課題の中心的なイメージを描くことができた。今後、さらに新たな事例を発掘調査していきたい。 予算が少ない中で、国際会議を2回開催できたことは有意義であった。いずれもかねてより共同研究してきた海外の研究者の日本への訪問調査のコーディネートをして、その日程の中で開催できたものであり、この間の積み重ねの共同研究の重要性を改めて確認できた。 北海道から九州まで研究分担者がいる中で、研究会を3回開き、それぞれの調査結果を報告するとともに、本研究課題に関する問題意識を共有するための討議をすることができ、来年度への方向性をある程度明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.日本の新たな専門職形成の可能性の探究:社会教育主事は学校教育に次第にシフトし、福祉との協働は難しい。社会教育主事は現行の制度の枠の中で堅持しつつ、松江市のように、社会教育と地域福祉を統合してコーディネートし地域づくりにつなげていくような専門職を民間資格として提案するとともにカリキュラムを構築できないか検討を始める。 2.Social Pedagogy、社会教育福祉の比較研究:-ドイツ、北欧、イギリス、アメリカなどの類似性と異質性の比較-それぞれの国におけるSocial Pedagogy養成のカリキュラムと職務を比較検討する。昨年の報告からアメリカの研究が日本にとって参考になる。福祉中心ではなく成人教育やcommunity developmentを包摂した概念は、日本の社会教育と重なる部分がある。 3.日本の地域事例の発掘と比較研究:松本市、松江市を引き続き調査すると共に、山形県鶴岡市の調査を行う。鶴岡市においても、地区社会福祉協議会が主体となって地域福祉の活動を行っており、松江市と比較する。 4.アジア諸国の新たな動向の研究:韓国については、平生教育士とともに、他の専門職についても調査する。中国・上海の社区教育、ウズベキスタンのマハッラについて調査研究する。 5.社会教育と福祉と地域づくりの関連構造に関する理論研究:福祉については、松本市や松江市のように公民館と連携できる地域福祉と、深い専門性を必要とする福祉を区別して考える必要がある。Social Pedagogyは、深い専門性を必要とする福祉も担っており、その点で日本の社会教育福祉と異なっている。 日本の場合、社会教育福祉はコミュニティベ-スで取り組まれるが、社会教育と福祉が地域づくりに呑み込まれる可能性がある。社会福祉協議会の活動は、社会教育と重なる部分も多いので、松江市と同じような事例を発掘して調査研究する。
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