研究課題
本研究の目的は、国際比較授業分析の方法を開発しながら、グローバルな現代社会におけるペダゴジーの文化的基底の様相とその機能を解明することであった。本研究では、授業実践学(ペダゴジー)には、教えることの原理的な追究と、具体的かつ現実的な授業実践の可能性とを統合することが学問的に求められる。そのため、授業実践の事実(エビデンス)に基づく国際比較授業分析により、ペダゴジーの背後にある文化的基底の様相とその機能の解明を進めてきた。それらの結果から、授業実践の事実の背景をより深く省察する際、異なる文化的背景を有する者のレンズを通すことによって、自明である文化的コードを抽出することが可能となり、さらに考察(討論)を通して文化的スクリプトを明らかにすることで、「文化を超えた学習」の可能性を示してきた。本研究で開発してきた(レンズとしての比較授業分析)方法の過程は、まず、複数の研究でのエビデンスで示された知見、明らかになった各国の「レンズ」を相互に比較検討し、単なる情報の羅列ではなく、統合的に分析可能な枠組みを見出す。それにより、新たな視点や関係性を提示する。次に、その枠組みに基づいて、各研究で考察された知見を再整理する。最後に、実践への示唆として、他者の「鏡」で自分たちを見直す。例えば、イランと日本では、学問の権威や教師の権威を重視し、計算手続きなどの近代的能力を育てようとするイランの一方で、日本は、学問や教師より、子どもの独自の考えが出ることを重視し、ポスト近代的能力に目を向けている点等が示されている。また、シンガポールは子どもに対し、知識活用あるいはビジネススキルを育てようとする傾向が強いが、イランは学問を教えるという傾向が強い点が示され、一方で、日本は、子どもを重視している点が示された。特に日本は子ども同士の横のつながりの強さを歴史的に保持していることが本研究からも示唆されている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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European Journal Education
巻: 54 ページ: 233-249
10.1111/ejed.12340