本研究は高等教育の費用負担と学生に対する経済的支援について、米英仏中韓と日本との国際比較により、日本の現状と問題点を明らかにした。英仏など公財政が逼迫している国でも給付型の支援が手厚く行われている。また、中国や韓国でも近年公的支援を大幅に拡充している。これらに比較して、日本の公的支援の乏しさが顕著である。授業料減免は、多くの大学で実施されているものの、国立と公立と私立大学で公的な支援制度が異なる。また、専門学校では2つの道県を除いて公的な授業料減免制度はない。さらに給付型奨学金は2017年度に初めて創設された。また、特にアメリカでは支援の高等教育機会や休学・中退防止に対する効果の検証研究や情報ギャップの研究が多数なされているが日本での研究は進んでいない。 また、学生生活調査やその他の調査統計の分析を実施し、とくに新たに実施した全国高校調査から、経済的な支援のみならず、進学に要する費用や支援に関する生徒や保護者の情報の認知度と、それに大きな影響を与える学校等の進路指導やガイダンスなどの実態を明らかにした。高校の奨学金担当者あるいは最も詳しい方を回答者としたにもかかわらず、日本学生支援機構奨学金制度がわかりにくく、保護者の理解も進んでいない。また、高校生活科の教科書の分析からも、情報提供が十分なされていないことが示された。 今後、さらに学生支援制度が拡充することになれば、情報ギャップの問題はより深刻化することが懸念される。こうした状況に対して、今後の支援、さらに、学生や保護者への情報提供のあり方について、所得連動型奨学金返還制度の改善など具体的な政策的提言を行った。さらに、これらの研究活動を通じて得た知見を元に、米中韓の研究者と国内の研究者との学術交流を推進するため、国際ワークショップを開催するとともに、その成果をワーキングペーパーとして刊行した。
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