「教師の資質・力量・誇り・パフォーマンス(NAPP)と学校教育の質(SQP)」の実態と規定要因の解明を目的に、関連文献の検討結果とOECDのTALIS2013の結果を踏まえ、3つのWeb質問紙調査を実施し、4つの国内学会大会で各2回・計8件の発表を行い、2点の研究成果報告書を取り纏め、目下、学術書刊行の準備中である(2019年10月刊行予定)。 ◆Web質問紙調査:①第1回教師調査(2017年2月、小中教員1782名)、②第2回教師調査(2018年2月、小中高校教員1440名)、③一般人調査(2018年2月、1000名) ◆分析結果と知見は多岐に亘るが、ここでは特に示唆に富む2点のみ紹介する。 1)TALIS2013の結果で注目された日本の教師の自己効力感12項目の著しい低さ(肯定2選択肢の合計で25~85%ポイント低い)の一因が4件法選択肢のワーディングにあると考え調査対象者を2分し、それぞれにTALIS元版と同変更版で回答してもらった結果、前者はTALISの結果とほぼ同じだったが、後者の肯定回答率は大幅に向上したものの(10項目で10~25%ポイント低い)、「批判的思考を促す」で43%ポイント、「自信を持たせる」で30%ポイント低い結果となった。日本の特殊性として改善すべき課題であろう。 2)「働き方改革」が喧伝され、もう一方で教職は介護職などと並んで「感情労働」でありバーンアウトも多いと指摘されてきたが、「多忙さは解消されてきたか」への4件法・否定的回答は83%だった。他方、バーンアウト尺度17項目に基づく「情緒的消耗感」の規定要因について重回帰分析を行った結果、男性、高年齢層で消耗感が低く、仕事評価面で教職後悔、多忙疲れ、校務負担感、職員不足、マスコミの無理解を感じているほど高いという結果となった。この結果は、教員の指導環境を改善していくうえで示唆に富むものであろう。
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