研究課題/領域番号 |
15H03494
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
荒木 祐二 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00533986)
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研究分担者 |
東原 貴志 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10370850)
谷田 親彦 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20374811)
山崎 淳 北里大学, 獣医学部, 准教授 (60200648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生物育成 / 中学校技術科 / 教科内容 |
研究実績の概要 |
当該年度は、生物育成に関する基礎的知見の醸成と指導すべき学習対象の抽出を目標とした研究活動を実施した。その成果は、①産業施設および教育実践の現場視察と②基礎資料の収集・分析と学習対象の抽出に区分される。 ①については、静岡県内の水産高校ならびに「作物の栽培」・「動物の飼育」にかかわる産業施設を視察した。水産高校では、座学ならびに実習を参観するとともに、生物育成に関するカリキュラムや知識・技能の定着、評価に関する聞き取りを行った。また、産業施設においては、各産業の実状を把握するため、就労者を対象として品種の選定、環境管理、栄養管理や出荷方法などの育成上の工夫、生産物の品質・収量(出来具合い)を評価する観点、改善に向けた試験への取組み等に関する聞き取り調査を実施した。 ②については、全国中学校における生物育成の実施率が9割を超える「作物の栽培」を対象として、教科内容学の所見を基に、生物育成教育において生物生産(作物の栽培)を構成する基礎概念の枠組みを構築した。作物の栽培にかかわる学術分野と教育分野の文献を対象とした関連用語を抽出して基礎概念を整理した結果、生物生産を構成する基礎概念は、「一次生産」、「二次生産」、「計画・評価」、「消費・利用」に区分できた。また、「一次生産」は、「生物」、「環境」、「生物管理」、「品質・収量」に分類された。さらに「生物」は、「分類・育種」、「構造・機能」、「生理・生態」、「成長」に細分された。「環境」は、「気象要素」、「土壌・水要素」、「外的生物要素」に細分され、「生物生産システム」も該当した。また、これらの基礎概念間にみられる相互関連性を構造化した。これらの成果を日本産業技術教育学会技術教育の研究に論文として投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のとおり、当該年度に予定していた生物育成に関する基礎的知見の醸成と指導すべき学習対象の抽出を目標とした研究活動は概ね遂行できた。①産業施設および教育実践の現場視察は、「作物の栽培」と「動物の飼育」の産業施設を訪問し、「水産生物の栽培」を実践する水産高校の授業を視察した。②基礎資料の収集・分析と学習対象の抽出についても、専門教育である高等学校における「作物の栽培」、「動物の飼育」、「水産生物の栽培」、「材木の育成」に関する教科書や学習指導要領を揃えるとともに、各分野に関連する学会やJABEEに認定される大学のカリキュラム、用語辞典などの収集に努めた。その成果は、「作物の栽培」を対象とした教科内容学的アプローチにより、生物育成教育において生物生産(作物の栽培)を構成する基礎概念の枠組みを構築した論文ならびに学会発表によって公表された。 また、生物育成の技術科教員養成習得基準の再検討にも着手し、「作物の栽培」に関して追加すべき項目を明らかにして、産業教育学会関東支部会にて発表した。 以上により、当初の年度目標を達成できたことから、おおむね順調に進展していると評価される。
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今後の研究の推進方策 |
「作物の栽培」を対象として明らかになった生物育成における生物生産を構成する基礎概念の枠組みについて、「動物の飼育」、「水産生物の栽培」、「材木の育成」の分野でも同様の手法により検討する。そして、最終的には生物育成全体にみられる生物生産の普遍的な基礎概念を整理し、生物育成教育の内容を検討するための基礎資料を作成する。 これと並行して、生物育成に関する題材・教材の開発に着手する。「林木の育成」については、林業用のシュミレーションソフト等を活用して、生徒が計画・管理・収穫の一連の流れを理解できるよう工夫がなされている。「作物の栽培」については、実習環境の整備されていない学校での学習を想定し、ハツカダイコンの栽培など小規模・早期での育成が可能な教材の開発に努める。また、本年度は汎用的な題材が見出されていない「水産生物の栽培」ならびに「動物の飼育」の題材・教材開発に注力する。その際には、生物育成全体を網羅できるガイダンス(生物育成の定義など)や学習のまとめ(最先端技術や環境とのかかわりなど)で、どの内容でも学習可能な題材・教材になることを視野に入れて開発にあたる。 さらに、生物育成に関する技術科教員養成修得基準の策定に踏み込み、「作物の栽培」に関しては着手しており、「林木の育成」では研究分担者によって策定が進められていることから、これら二つの分野については関連する研究組織と連携を図りつつ議論を深めていく。一方で、「動物の飼育」と「水産生物の栽培」に関しては、いまだ修得基準の検討がなされていないことから、基礎概念を整理するとともに、学習指導要領、教科書、および教育現場の実情に鑑みた修得基準の策定に努める。この際には、農林水産の分野間における指導内容の共通項を探り、生物育成全体でできるだけ共通した用語を用いるよう配慮して、教育の共通化を図るようにする。
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