研究課題
本研究では,外界からの刺激に対して,心が動くという現象がなければ,感性を育成することはできないと考え,心の動きを脳血流の変化でとらえることができないか検討している。平成29年度は,音楽鑑賞,絵画鑑賞,詩の鑑賞に注目し,その三者を独立して鑑賞するときと,音楽と絵画の鑑賞を重ねたとき,音楽と詩の鑑賞を重ねたときの違いがあるかどうかについて,NIRS(Near Infra- Red Spectroscopy)を用いた実験を行った。本研究では日立メディコの光トポグラフィ装置ETG-4000を主として用いた。被験者は大学生とし,前頭部,右側頭部,左側頭部の3部位を計測し比較検討を行った。その結果,被験者によって差が見られたが,音楽を重ねることによる心理的な変化を質問紙調査で確認し,脳血流では側頭部のoxy-Hbの変化としてとらえることができた。他にもピアノの音色の違いが脳内に及ぼす影響などについても検討した。人間には,視覚,聴覚,触覚,味覚,嗅覚という五感がある。感性は,視覚,聴覚,触覚など複数の感覚モダリティが同時に進行するようなマルチモーダルな多次元構造にその形成基盤があるという。芸術教育においても,複数の感覚モダリティを意識しての感性の育成という視点をもつことが大切となるだろう。外界の刺激に対する脳内での情報処理システムとして,無意識的で直感的,自動的なシステム1と,意識的で論理的,制御的なシステム2があるという。脳生理学的にも外界からの刺激に対して,高次脳機能を司る大脳皮質連合野における情報処理を経て情動機能を司る大脳辺縁系の偏桃体へ流れるルートと,大脳皮質を経由しない直接ルートがある。子供たちの感性を育成するとき,このどちらかのルートに偏りすぎるのではなく,直感的な情報処理と論理的な情報処理のバランスを考えていくことも大切な視点となる。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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信州大学教育学部研究論集
巻: 12 ページ: 123-135
信大国語教育
巻: 27 ページ: 62-65