研究課題/領域番号 |
15H03514
|
研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
中村 満紀男 福山市立大学, 教育学部, 教授 (80000280)
|
研究分担者 |
二文字 理明 大阪教育大学, 教育学部, 名誉教授 (00030461) [辞退]
廣瀬 信雄 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10218844)
岡 典子 筑波大学, 人間総合科学研究科(系), 教授 (20315021)
藤井 聰尚 広島文化学園大学, 社会情報学部, 教授 (50033634)
冨永 光昭 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (50227633)
木村 素子 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (60452918)
高柳 瑞穂 (松本瑞穂) 東京福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (60588010)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 欧米障害児教育 / 歴史 / アメリカ合衆国 / ドイツ / スウェーデン / 社会主義 / ロシア |
研究実績の概要 |
今年度の研究実施計画に基づいて示す。 1.インクルーシブ教育構造の激変に対応困難な日本の現状 日本にはインクルーシブ教育に積極的に転換しようとする地方がある一方で、平成19年度以降の特別支援教育を採用している地方が多く存在するが、後者の地方は、合理的な手続きによって意識的に採用しているわけではない。ここに、地方分権の隠れた問題がある。これは、近年出現したわけでなく、近代以降、陰に陽に歴史的に形成されてきた結果である。 2.日本の現状の源泉と欧米障害児教育史の再構成 (1)特定地方の先進性が各国で一般化されているわけではないし、すべての障害児(者)に適用されているわけではない現実と、障害児教育の理論的・実践的改善をリードする高度な専門家の存在が理解された。 (2)知的障害児のインテグレーションを阻害する要因は、一般公教育にこそ求められることが、スウェーデンの検討から明らかになった。 (3)ソビエト・ロシア障害教育史の質的諸相について、①制限化でのヴィゴツキーによる革命とその反映、②サカリャンスキーによる盲ろう教育とその反映、③70年代欠陥学研究所の役割、④「分化」と「インクルージョンの受容」、⑤社会変動と専門性の希薄化について検討した。 (4)日本における中央集権制の現実的効用の複雑さが、ある程度明らかとなった。大戦後の特殊教育振興のように中央集権制が有効だった時期もあるが、1で述べたように、地方分権制がサボタージュに利用されている現実もある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.日本の特別支援教育の地方間格差がある程度把握できた。 インクルーシブ教育に転換している地方と「旧」特別支援教育のままである地方がある。後者の問題は、「旧」状態にあること自体にではなく、インクルーシブ教育的特別支援教育(「新」)の情報を保護者に開示していないこと、「新」と「旧」との比較対照を行ったうえで「旧」を採用していないこと、「新」を実施する資源がないことにある。これは、自治事務の悪しき例である。 2.これまでの欧米障害児教育史研究の問題点を明らかにできた。 これまでの欧米障害児教育史研究は、多分に理念主義的な理解の傾向があり、それが、各国独自の文脈の表面的な理解と相俟って、先進国障害児教育史に対する高い評価と日本の後進性を強化してきたように思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
1.日本の特別支援教育の地方格差の状況の把握 インクルーシブ教育における地方間・地方内格差の発生の理由と背景について情報を得ることにより、明治以降の日本の障害児教育の政策と実施主体の歴史に基づく障害児教育の在り方への示唆を得る。これは、研究目的の1と3に関連する作業である。 2.初年度で検討した欧米障害児教育史の再構成に基づく作業の進行 日本の特別支援教育の現状とその歴史的形成過程を意識しつつ、欧米各国における障害児教育の歴史を構築した社会的・文化的文脈に即した検討と日本の受容態度と結果について検討を進める。
|