研究課題/領域番号 |
15H03515
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
新井田 孝裕 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (30222730)
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研究分担者 |
小野 弓絵 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10360207)
原 直人 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (30265699)
岩崎 淳也 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (40757027)
伊藤 美沙絵 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (60365179)
畦上 恭彦 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 教授 (70337434)
四之宮 佑馬 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (90399759)
鈴木 賢治 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 助教 (90433599)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 発達障害 / 医療と福祉 / 眼球運動 / 視知覚 / 視線解析 / 近見反応 |
研究実績の概要 |
1)視線解析装置を用いて衝動性眼球運動速度の解析と頭部変化による測定誤差を健常者で検討した。サッケード計測用に“step”、“gap”、“overlap”、“anti”、“memory-guided”の5課題が完成し、発達障害児が興味を持つよう視標をアイコンに変更して計測を実施し、さらに解析ソフトウェアの改良を行った。発達障害児26名、定型発達児20名の眼球運動課題の測定が終了し、定型発達児18名の解析結果を7月の学会で発表する。2)視運動性眼振(OKN)緩徐相速度を算出し、さらに速度の最頻値から利得を求めることで能動的に誘発されるLook OKNと受動的に誘発されるStare OKNの波形特性を明らかにした。3)調節機能が計測可能なARK-1sを用いて発達障害児4名、定型発達児4名で近見反応を測定した。4)大田原市内の未就学児1,600名を対象に視機能健診の結果を後ろ向きに調査し、眼位と両眼視機能の関連及びその分布を明らかにした。5)実際に人と対面して視線を合わせた場合と顔写真に写っている目に視線を合わせた場合の健常人の脳活動をfNIRSで比較した。人と対面した場合は写真と比べて左半球の前頭葉、側頭葉、頭頂葉で同期した活動が大きくなった。これらの領域は対人特異性とともに言語機能に関与し、社会性や対人関係の脳内機構を考えていく上で有用である。5)重度の障害を有する症例において簡便かつ汎用的な4つの視機能評価項目を用いてクラスター分析を用いて視機能の状態を5群に分類した。6)広汎性発達障害児で心因性反応と近見反応痙攣を呈した事例を考察し報告した。7)自閉症スペクトラム障害(ASD)児と定型発達児の新奇語習得時の視線方向について検討した結果、定型発達児は矢印のような非社会的刺激よりも視線を優先して語を学習するが、ASD児では視線への選好性は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視線解析装置(EyeLink)を用いた衝動性眼球運動課題の測定・解析プログラムの開発は順 調に推移しており、“step”、“gap”、“overlap”、“anti”、“memory-guided”の5課題に加え、視標のアイコン化と解析ソフトウェアは既に完成している。平成29年度の申請備品として購入した調節機能が計測可能なオートレフラクトメーター(ARK-1s)は付属のロール紙に結果を印刷するだけの簡易型であったため、メーカーの技術部に依頼して約4か月を要したが外部に精密画像データとして出力できるように改修した。このため、データの収集はやや遅れているが、リハビリテーションセンター・言語聴覚センター、および近隣小学校の研究協力依頼体制と言語聴覚士の教職員によるWISK-IV知能検査の実施体制は確立している。発達障害児の視知覚・注意機能と認知・言語発達の関連性を明らかにするため、研究会議とは別に、研究分担者と連携研究者である視能訓練士・言語聴覚士・眼科医・小児科医による実験データと認知・言語発達の照合を兼ねた検討会を複数回実施して発達障害児の認知および行動特徴を明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
今年4月に准教授で着任された内川義和先生と岡野真弓先生が研究分担者として研究班に加わり、研究を推進しやすい環境が整ったので、発達障害児・定型発達児でのデータ収集と解析を迅速に進める。小児では集中力の持続が短く、データの再現性を考慮すると同一課題を用いて一年間隔で測定し、成長に伴う経時変化と言語聴覚士の療育指導による改善の有無を評価することが必要であるが、継続的にフォローアップできない症例が散見される。このため、5~10歳の各年齢の発達障害児と年齢適合した定型発達児がほぼ同じ症例数になるよう症例を補完する方法に変更し、データの信憑性が乏しい症例は再測定を実施するか、困難な場合には解析から除外する予定である。次年度には研究成果を国際学会で複数発表できるように計画し準備を進めていく。オートレフラクトメーター(ARK-1s)を用いた近見反応を構成する「調節」と「瞳孔反応(縮瞳)」の測定は既に8名で実施しているが、明らかな異常は確認できていない。単眼で覗き込み、測定に60秒以上を要するため、信頼できるデータが得られない小児も散見される。このため、現有機器で両眼の調節・瞳孔径を経時的に測定できる両眼開放レフを組み合わせた評価プロトコルを作成すべきか検討を重ねる。市内の未就学児を対象にした視機能健診データの解析は基礎データとして活用できるため、今後も解析を進めていく。
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